トリガーモーメントを実現する3つの強み
では、トリガーモーメントの探索をどのようにして可能にしているのだろうか。貝塚氏は、電通が保有する「サイト閲覧データ」「ロケーションデータ」「テレビ視聴データ」という3つの強みを活かして見出すという。

1つ目の強みは、7.5億UBを誇る膨大なサイト閲覧データだ。その中には、生活者のサイト閲覧傾向や、コンバージョンにつながるトリガーモーメントも隠されている。
電通はそれを導出するべく、People Trigger Momentというフレームワークを用意。同フレームワークでは、以下5つの情報でトリガーモーメントを把握することができる。
・属性:性年代、未既婚、子供有無、職業、年収など
・ライフステージ:入学、昇格、就職、転職、住宅購入、結婚、出産
・嗜好性:ゴルフ、釣り、プロレス、サッカー、演劇、アウトドアなど
・スパイク型イベント/衝動:ダイエット、お見合い、デート、入院など
・感情:嬉しい、イライラ、トキメキたいなど
サイト閲覧行動がこれら5つのうち、どれを示しているものかを仕分けることで、マーケティングに活用可能な形にしていくのだ。
2つ目の強みは、ロケーションデータ。電通は、2018年3月に提携した米GroundTruth社とともに、3,000万IDの高精度なロケーションデータを蓄積。米GroundTruth社のプラットフォームを利用すれば、そのデータをリアルタイムの広告配信に利用することができる。
3つ目の強みは、テレビ視聴データ。これまでも電通はインターネットにつながったテレビから送られてくる365日の視聴ログを「STADIA」というシステムで解析。その後、People DMPを通じて視聴行動に応じたセグメントを作り、広告を配信してきた。
この一連の流れを行う際、テレビからSTADIAにデータが送られるまで2日程度かかっていたが、現在は15分から30分となっている。これにより、現在各局でどういったコンテンツが取り上げられているかを随時把握できる。電通は「STADIA」を活用したリアルタイム広告配信サービスを近日提供する予定だ。
人羅万象の世界を目指す
これらの3つの強みを活かし、トリガーモーメントを見つけていくわけだが、実際にはどのように活用されているのだろうか。貝塚氏は活用のイメージを自動車保険の事例で紹介した。
この自動車保険のクライアントでは、People DMPからコンバージョンにつながりやすい3つのセグメントを抽出。この3種類の有望顧客層が含有しているところにテレビスポットを実施。さらに、そのセグメントを活用した広告配信を行い、サイト来訪者へのリタゲの精度も向上。結果、予算は前年のままにも関わらず、対前年の契約件数から110%増加したという。
また、最近では「People DMPとプライベートDMPの連携、People DMPからのデータアウト」「1stPartyデータのマネタイズ、異業種間でのデータエクスチェンジ」に関する要望も多く、前者に関しては事例も語られた。
とある化粧品会社では、同社の持つ属性情報やECの利用頻度といった1stPartyデータと、People DMPが保有するサイト閲覧キーワード、同社の1社提供番組の視聴頻度を統合。これにより、競合他社に関する検索が増え、自社への興味が薄れているなど、自社データだけでは把握できなかった生活者の変化を把握できるようにした。把握した情報をもとに、コンテンツを変化させているという。
セミナープログラムの最後、貝塚氏はPeople DMPが目指す世界「人羅万象」について語った。
「弊社の独自調査では、単純なリターゲティングが気持ち悪いもしくは不快だと感じる人が75%いました。ただ、一方で、広告や企業発信のコンテンツでも自分が必要としている情報は嬉しいと答える人は95%いました。その中でPeople DMPが目指すべきは、人に関するあらゆる現象を網羅し、一人ひとりに最適なメッセージを届けることです。そうして、生活者のことを幸せにしながら、人羅万象というものをさらに進化させていきたいです」(貝塚氏)