ムスリム市場のリーダー的存在、マレーシアの人気ブランド
DIEDCとロイター通信のレポートが示すとおり、ムスリム市場を知るにはマレーシアでの動向を知るのが近道になるかもしれない。
最近マレーシア女性の間で関心が高まっているハラルコスメを切り口に、最新動向をお伝えしたい。
シンガポール最大のメディアグループSPH傘下のニュースサイト『AsiaOne』が伝えたところでは、マレーシアでは現在ハラルコスメの需要が急速に高まっており、ハラル認証を受けたコスメ企業は100社を超えたという。
コスメ企業が「ハラル」認証を受けるための条件には、コスメの原料として人体の一部が使われていないこと、イスラム法が禁止している動物由来の成分が使われていないこと、また遺伝子組み換え生物による原料を使っていないことなどが含まれる。
マレーシアのハラルコスメ市場の特徴として、ローカルブランドが多数立ち上がり人気を集めていることが挙げられる。
代表的なハラルコスメブランドには、Sorfina Hal、So.lek、dUCk Cosmetics、Orkid Cosmetics、Marcell&Co、Kamelia Cosmeticsなどがある。
Sorfina Halの創業者、ヘミー・ソルフィナ・ハリム(Hemy Sorfina Halim)氏は『AsiaOne』のインタビューで、ハラルコスメ需要は高まっているものの、供給は不足していると説明。需要の高まりは、ムスリム市場での需要増だけでなく、エシカル・コンシューマーが増えていることも影響している可能性を示唆している。ハラル認証は、オーガニックや自然の原料だけを使用しているということだけでなく、製造過程、労働環境、ロジスティクスにおいてもクオリティを担保するものである。そのため自然環境や労働問題を意識する非ムスリム消費者からの関心も高まっていると考えられるのだ。

このように自然環境や労働問題を意識した購買意思決定を行う消費者はエシカル・コンシューマーと呼ばれており、ミレニアル世代やZ世代の間で少しずつ増えていると言われている。
ハラルコスメの人気が高まっていることは、マレーシア初となるハラル専門美容マーケットプレイス「Prettysuci」の登場にも見てとれる。
2017年5月、26のハラルブランドとともにローンチされたワンストップのマーケットプレイスだ。コスメだけでなく、ネイル、スキンケア、ボディケアなど様々な美容プロダクトを購入することができる。オンラインショップだけでなく、2018年中に旗艦店をクアラルンプールに出店する計画もあるという。
また、湾岸諸国、シンガポール、ブルネイ、ドイツ、英国など海外からのオーダーも増えており、世界的に認知されるハラルマーケットプレイスになりつつある。

マレーシアはコスメだけでなく、モデストファッションのトレンド発祥地としても認知されている。モデストファッションのトレンド仕掛け人の1人として名が挙がるのは、有名ブロガーで起業家であるビビ・ユソフ(Vivy Yusof)氏(30歳)だ。ユソフ氏が2014年に立ち上げたヒジャブブランド「dUCk」。ローンチから2017年まで着実に売上を伸ばし、現在ではヒジャブだけでなくアクセサリー、バッグ、インナーウェア、コスメなどを扱う総合ファッションブランドに成長している。創業者自身がミレニアル世代であり、若い世代をターゲットにしたデザインを採用、またソーシャルメディアを駆使したプロモーションなどが成功の要因になっているようだ。

供給が少なく需給バランスが取れていないムスリム市場では、今後もまだまだムスリムブランドが登場する見込みだ。ムスリムだけでなく非ムスリムの需要も取り込む可能性を秘めており、今後の展開からも目が離せない。