世界経済の成長エンジン、ムスリム市場の成長予測
まず、ドバイ・イスラム経済開発センター(DIEDC)とロイター通信がまとめた最新レポートをもとにムスリム市場を俯瞰してみたい。同レポートで言及されている市場カテゴリーは、ハラル食品、モデストファッション、ハラルトラベル、ハラルコスメティクス、ハラル医薬品、ハラルメディア、イスラム金融だ。
ムスリム人口が世界全体で増加しているため、どの市場も成長が見込まれている。ハラル食品市場は2016年に1兆2,450億ドル(約140兆円)だったが、2022年には1兆9,300億ドル(216兆円)に拡大する見込みだ。また、モデストファッション市場は2,540億ドル(約28兆円)から3,730億ドル(約42兆円)に拡大すると予想されている。ちなみに「モデストファッション」とは、肌の露出が少ないファッションを意味し、最近ではムスリム向けファッションの意味で用いられることが多くなっている。

イスラム金融は2兆2,020億ドル(約247兆円)から3兆7,820億ドル(約423兆円)、ハラルメディアは1,980億ドル(約22兆円)から2,810億ドル(約31兆円)、ハラル医薬品は830億ドル(約9兆円)から1,320億ドル(約15兆円)へとそれぞれ拡大する見込みだ。
旅行需要も高まる見込みで、ハラルトラベル市場は1,690億ドル(約19兆円)から2,830億ドル(約32兆円)に拡大するという。
ムスリム旅行需要の高まりは日本にとっても無視できないものになりそうだ。
マスターカードとクレセント・レーティングが行った調査では、訪日ムスリム旅行者の数は2004年の15万人から2016年には70万人と年々着実に増えており、さらに2018年には100万人、2020年には140万人に達する公算が大きいことが明らかとなったのだ。その60%がインドネシアやマレーシアなど東南アジア諸国からの旅行者で占められるという。
DIEDCとロイター通信のレポートに戻り、ムスリム市場の成熟度を国別ランキングで見てみたい。
同レポートは、イスラム協力機構に加盟する57ヵ国と非加盟国16ヵ国の計73ヵ国を対象に、ムスリム市場エコシステムの成熟度合いを指数化し、ランク付けしている。総合指数でトップとなったのはマレーシアだ。5年連続でトップとなっており、ムスリム市場をリードする重要国家としての地位を固めている。2位はアラブ首長国連邦であるが、1位のマレーシアとは60ポイント以上の差がある。3位以下は、バーレーン、オマーン、パキスタン、カタール、クウェート、ブルネイ、ヨルダン、インドネシア、イラン、シンガポール、スーダン、バングラデシュとなっている。