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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』デジタルクリエイティブの作法

アジリティとリスペクトで話題を作る

パロディやオマージュには、最大限の理解と配慮を

――デジタルとマスで、キャンペーン設計の考え方を変えていますか?

 考え方は変えていません。ただ、キャンペーンを展開するメディアに対して、消費者がどのような情報を求めているのかは考えますね。明言はされていなくても、各メディアに対して「これはやらないよね」というリテラシーを消費者は持っています。それを外した表現をすると、たとえば「テレビなのに、こんなことをよくやったな」という、感心したような反応もあるんです。

 パロディもその一つです。今は共有できる文脈が減ってきているから、知っているものとして過去のパロディが生まれやすい傾向はあるかもしれません。パロディは、教養のリテラシーというか、みんなが知っている物事を軸に一緒に遊んでいく感じで設計するのが大事かなと思います。そして、リスペクトが必要。その意味でとても気を配ったのが、どん兵衛の東西食べ比べのキャンペーンです。

――人気のラッパーが登場し、東西の文化やうどんの違いをラップで競うという内容でしたね。

 ラップも、進化を続けています。今の流行を生み出したのは、東京だけではなく地元で活動するラッパーたち。そこで東西を代表するラッパーがお互いの文化を言い合いながら、最後はうどんについて言及していくとおもしろいのでは、と考えました。前提として、ラップ人気にそのまま乗っかるのは違うし、ちゃんとラップの歴史、文化を理解して取り組むべきだろうという気持ちが強かったです。元々ラップ発祥の地である米国では、東西でラッパー同士の争いが起きていたという暗いエピソードがあります。

 それに対し、日本では主張し合うけれど明るい話としてまとまる、食べ物の東西の違いを当てることで、ラップ文化をリスペクトしました。さらに制作チームは、アドバイザーから映像制作、音楽までヒップホップやラップ関係の人に参加いただいて、ファンからもすごく喜ばれました。流行しているものに乗っかるときやパロディは、まず理解や踏み込み方が大事です。僕自身も勉強しますし、それに詳しい人をチームに引き込みながら進めています。

広告でボトムアップ型の熱狂を巻き起こしたい

――クリエイターとして、日々どのようなことを心がけているのでしょう。

 シンプルなことですが、食品を担当するときはその食品を毎日食べます。商品のことをずっと調べて考えていると、「わかるぞ、こいつの気持ち」というように、感情が重なる瞬間があるんです。ずっと商品に触れ続けているクライアント以上に、その商品を愛せるようにならないといけない。

 商品の愛すべき部分を見つけて、良さを膨らませていこうと思えるようになると、クライアントのニーズもわかるし、気兼ねなく相談し合える間柄になれます。またそんな関係を築けると、企画に違和感を覚えたとき、クライアントの中から答えを見つけ出せることが多いんです。

 昔は「クリエイターは我を通せ」と言われていましたが、企業と消費者が同じ土俵に上がっている今は、代理店もクリエイターもクライアントと一緒に肩を組んで取り組まないと、わからないことだらけです。それぞれが別の方向を見ているけれど、背中を合わせて、志を共有しているという状態で協力し合うのが理想だと思います。

――今後は、どのようなことに取り組んでいきたいですか。

 デジタル、テレビCM、イベントなど、様々な方法で世の中に広告発のプチブームを作りたいです。広告がブームを作らなくなったとは言われますが、これまでの広告は基本的にトップダウン型。でも、消費者の中から話題を作り上げていく、ボトムアップ型であれば実現できそうですし、スマホがある今は、かえって小さな盛り上がりを作りやすい時代だと思っています。

 事実、10分どん兵衛では、デジタル空間に話題を作り、消費を動かすことができました。他にも、手がけてきた東急池上線のフリー乗車のキャンペーンや、ワンピースの京都キャンペーンで生まれたのは、一つの場所に人が集まるという狂乱に近い盛り上がりです。実空間へ人を呼ぶ、そのための仕掛けを、真面目なことであれ、ふざけたことであれたくさん考えていきたいですね。それこそ、都市ではなくて、町や村からスタートした小さな試み1つから、日本を揺るがす革命的なことができるんじゃないかと思うくらいです。そこに、これからのおもしろみを感じています。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/09/25 15:30 https://markezine.jp/article/detail/29277

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