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有園が訊く!

中国が急速にデジタル化しているワケ 日本企業が巻き返すカギは「UXグロースハック」にあり


社会インフラがデジタルに“下支え”される時代

有園:テックがあるからハイが機能する。それは……マルクス経済学の唯物史観的にいうと、上部構造、下部構造みたいな話ですね。

中島:あ、そこへ行きますか(笑)。すごくかいつまんで話すと、マルクスは「下部構造:インフラ・ストラクチャーが経済で、その上部に社会がある」と提唱した。その次の世代の人たちは皆「社会の上に経済がある」と逆を提唱して、マルクスの理論はしばらく理解されませんでした。

 でも今、デジタルが浸透したらプラットフォームビジネスこそ基盤になって、その上に上部構造:スープラ・ストラクチャーたる社会が乗るという時代が現実になった。おそらく自動車や鉄道会社、なんなら都市計画の人も国ですら、自分たちがインフラだと思っていたと思いますが、実はその下部にはデジタルによるインフラがあって、その上に乗っているスープラ・ストラクチャーにすぎない。そのように考えを転換しないといけないのが、根本的なところだと思います。

有園:興味深いですね。御社はユーザーエクスペリエンスを追求している会社なので、サービスのあり方、人間にとっての心地よさを追求すると、社会構造の話にもなってくるんだろうと思います。

中島:そうですね。余談ですが実はここ数年で、官僚の人がビービットの中途採用に応募してくるんです。少なからず「社会をよくしたい」というマインドがある人の一定数が、そのためには今は国の政策ではなくデジタルの環境設計がキーなんだ、と気づいている。

 先の話で、自分たちがインフラ側だと思ったら違ったから、上部から下部に来るみたいな感じですね。でも同時に、彼らはまだ「発展のためにどの規制を外すべきか」と議論しがちです。

宮坂:それは実はイノベーションとは逆行していて、本当に発想を自由にするなら「規制を外したからこれはOK」ではなく「これだけNG、あとは自由」とすべきですよね。そうすると、デジタルの設計が自然発生的に生まれてくる。

既に便利ゆえにデジタル化が遅れる日本

中島:そこがまだ、発想の転換が足りないですね。もっというと、デジタルは空間が無限なので、スペースが有限で希少だった前時代と違って、アイデアのほうが希少性が高い。なのでアイデアの幅を最大化するように制度設計されるのが正しいですね。

有園:なるほど。その上で、急速にデジタル化する現在の中国から日本が何を学ぶべきかと考えると、冒頭で中島さんが話されたタクシー争いのように、先進国ではインフラになっているサービスがまだまだ脆弱だということが挙げられるんじゃないかなと思うんです。

 逆にアメリカでは、様々な領域でドラスティックな改善が期待されながら、実は変化を遅くしているのは急に変われない既存社会のマジョリティー層だとされている。

中島:まさに、中国では社会の脆弱さが、無限のデジタル空間を活用して新しい社会を設計するのを加速させている部分があります。

 たとえば、日本ではあまり進んでいないのに中国が一気にキャッシュレス化したのは、犯罪や貨幣の汚さといった問題が山積みだから。解決すべき不幸せ、ペインポイントがたくさんある。日本の足かせになっているのは、実は既存の制度の質の高さで、ある程度満足だからデジタル化のメリットが際立たないんですね。

有園:確かに。そしてそのペインポイントは、デジタル化して得られる行動データを使って、モーメント分析(ある状況で生じる特定の行動パターンを抽出する分析)をすることで、どんどんわかってくる。

中島:そう。中国でシェア自転車がさかんなのは、使う人の行動データが取れるからです。行動のデータを束ねて俯瞰し、共通のモーメントとなっているペインポイントを発見して、そこに企画を当てて解決してあげると、ファンがついてビジネスが成長していくわけですね。

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UXを改善してビジネスを伸ばす「UXグロースハック」

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/10/16 11:20 https://markezine.jp/article/detail/29336

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