MAとの連携でキャンペーン施策のレスポンス予測が可能に
セッション後半では、「DataRobot」を使った実際の機械学習モデルの構築について、デモを交えながら紹介された。最初に、複数の変動因子と結果を含む「教師データ」を準備する。最低でも数百行は用意する必要があり、数万から数十万行のデータがあると良いとされる。
次に行うのは、予測モデルの構築だ。与えられた教師データから、AIが条件と結果の関係を表す予測式を自動で見つけ出す。これに並行して、予測データも準備する。結果を導き出したい条件などは、人間が準備して予測モデルに登録する。そして最後は、AIが自動で予測値を計算する。
こうしたモデルをマーケティングに活用する動きは、BtoBとBtoC両方の領域で広がっている。その一例が、キャンペーンデータを活用したキャンペーンレスポンス予測だ。
過去のキャンペーンデータからレスポンス予測モデルを構築し、見込み客リストを分析して次回キャンペーンのレスポンス率を予測。その上で、レスポンス確率の高い順から、ダイレクトメールやターゲティングメールなどを使ってアプローチするといったものだ。
シバタ氏は、「こうしたアプローチは、既存の属人化したマーケティングよりも高精度で、細分化して実行できるのが強みです」と語った。
また、顧客の行動履歴などをもとに、顧客推奨度を予測することもできる。たとえば、特定の製品やサービスに対する顧客のロイヤリティを「推奨者」「中立」「批判的」で判断し、個別に最適化されたプロモーションオファーを実施するといったものだ。この場合、顧客推奨度の予測はAIが、個別プロモーションはMAツールが担う。Marketoとの協業によって、こうしたマーケティングも実現可能となる。
AIは人間の弱いところを補う手段でしかない
ここで注意したいのは、最後のアクションだ。シバタ氏は、「たとえば、過去の顧客解約データを活用して予測モデルを構築し、解約確率が高いメンバーを抽出したとします。しかし、顧客が既に解約すると心の中で固く決めているならば、この場合手の打ちようがありません。重要なのは、予測した“先”のアクションを用意しているか、またそれを分析することに意味があるかどうかです」と述べた。
シバタ氏曰く、「AIは人間の弱いところを補う手段」だという。データと課題設定を行えば、AIは過去のデータから学習し、可視化や予測をすることができる。多くの変数があっても、定量的・客観的で、人間より高精度であることが多い。その一方で、「未知の事象に柔軟に対応する」「少ない情報でも、過去の経験から予測する」といったことは困難だ。
最後にシバタ氏は、「人間とAIがお互いの特性を理解して補完し合うことが、新たな次元を生み出すことにつながります」と語り、講演を締めくくった。