アパレルから「ライフスタイル&テクノロジー」企業へ
押久保:御社は2015年、事業領域を「アパレル」から「ライフスタイル&テクノロジー」へ転換すると打ち出されました。MarkeZineとしては、サブスクリプションのファッションレンタルサービスも興味深く、またアリババとの協業によるデータ戦略にも注目しています。まず、現在の事業の柱をうかがえますか?
石川:柱としては、国内アパレル、海外アパレル、そしてプラットフォーム事業の3つがあります。まず国内では約30ブランド・1,000店舗を展開しており、現状の当社の大きな収益源となっています。
海外では2002年の香港でのフランチャイズ展開を皮切りに、08年に台湾で、また11年に中国で現地法人を設立し、現在はベトナムやインドネシアなどへも進出しています。特にベトナムは好調で、当社が上場をにらんでいる2020年までに、現在の純利益を2倍に引き上げたいと考えています。
プラットフォーム事業では、15年にローンチしたファッションレンタルの「メチャカリ」が黒字間近です。他社ブランドを含む、マーケットプレイスのプラットフォームが黒字化することで、当社の評価も変わるのではと思っています。
押久保:今年2月には、ソフトバンクとの合弁会社で百貨店型のECもスタートされていますよね?
石川:ええ、F2層をメインターゲットに、ハイブランドを集積したECサイト「ストライプデパートメント」をオープンしています。当初から600ブランドを集められ、順調な滑り出しです。黒字化まで数年かかると見込んでおり、その間に数十億円規模で投資するつもりですが、突っ込み切って離陸させたいですね。
リテールとプラットフォーマーが接近している
押久保:グローバルでSPAの基盤を持ちつつ、自社オムニチャネルではなくマーケットプレイスでのプラットフォームを持ち、またシェアリングエコノミーによるサブスクリプションという要素も有しているという……。
石川:それがアパレル出自だというのは、世界的にもきっと例がないと思います。グローバルSPAでプラットフォーマーという2軸を持った、ライフスタイル&テクノロジー企業へと今ストーリーを描いているところです。
押久保:インタビュー記事などで、もともと“路線転換”を事業全体のキーワードとして掲げていると話されていました。ただその中でも、アパレルからライフスタイル&テクノロジーへというのは、軸足を変える大英断だと思います。その意志決定の背景に、どういう危機感があったのでしょうか?
石川:路線転換は、もともとセレクトショップだったのをSPAへ、また雑誌でのブランディングがメインの時代にテレビCMを打つなど、当社の事業に常にあった概念ですね。
ご質問の危機感については、やはりアリババの「T-mall」の勢いや、バーバリーのCEOがアップルの小売事業の責任者に就任したり(参考情報)、あるいはAmazonがスーパーやコンビニ事業に参入したりといった動きはみていました。ひとことでいうと、プラットフォーマーがリテール側に動いている。じゃあ僕らはその逆、リテールからプラットフォーマーへ動いていこう、と。
押久保:異種格闘技戦の様相ですね。
石川:ええ。プラットフォーマーからリテールを始めた会社 vs リテールからプラットフォーマーになろうとする会社、という構図です。