※本記事は、2018年11月25日刊行の定期誌『MarkeZine』35号に掲載したものです。
広がるマーケティング・アカウンタビリティの概念
ビジネスのグローバル化とともに、日本企業においてもマーケティングに掛ける投資額は年々増加している。その背景には、データで消費者の行動や施策の効果を可視化できるようになったテクノロジーの進化があるだろう。同時に、マーケティング活動の効率・効果の可視化、すなわちマーケティング投資に対するアカウンタビリティ(説明責任)を果たすべきだという意識が生まれた。
元々は、自社の広告施策を行う際に、広告代理店との契約内容や契約金、そしてその活動から得られた成果を可視化し、その投資対効果を説明するという、広告主に対する代理店のアカウンタビリティという文脈が主だった。それが今は、企業におけるマーケティング投資の増大から、株主をはじめとしたステークホルダーへのマーケティング投資の説明責任、という概念まで広がっている。
ステークホルダーへマーケティング投資を説明する指標は、売り上げ、グロスマージン、EBITDA、PERといった経営指標に基づくものであり、一般的なマーケティング施策のROIとは指標が大きく異なる。だからこそ、「株主価値」をベースにマーケティング活動のメジャメント(計測)を再構築する必要がある。
ちなみに米国では2000年初頭から、マーケティングの実務家の間でマーケティング・アカウンタビリティへのニーズが高まり、2007年にはThe Marketing Accountability StandardBoard(以下、MASB)が設立された。
MASB設立の目的は、「個々の産業における、また学術界におけるマーケティング・アクティビティのパフォーマンスの成果基準を設け、またそれがより客観的に各企業の財務指標に近いものを設ける」こと。噛み砕くと、ファイナンスに密接した形でのマーケティングのメジャメントが必要であるということだ。