CVRに代わる指標は?
――CVRに代わって、今は何をKPIにされているのですか?
梶井:現在は、注文単価を重要視しています。注文単価を構成する指標を軸に、施策やサービスに紐づく形でKPIを設計しています。
注文単価は、「何種類の商品を買ったか=行数」と「いくらの商品を買ったか=行単価」の2つの指標によって、施策や考え方が変わってきます。ですので、これはどちらの指標を上げるための施策なのかを毎回考えるようにしています。
また、CVRが一切悪というわけではありません。レジまで進んだら、単価など関係なく購入してもらうことだけを考えればいいので、ここではCVRを見たりもしています。今LOHACOが提供したいサービスを作る上で、それぞれの機能がどういう数字を追いかける必要があるのかを、整理しながら進めている状況ですね。
――具体的なアクションベースで変わったことはありますか?
梶井:「〇〇円以上ご購入いただいたら値引きをします/ポイント付与します」などのメッセージングで、注文単価が上がる仕組みを作ることに注力したりしています。
また、サイト改善のフローも大きく変えました。LOHACOでは、サイトのUI/UXについてABテストをするとき、RPV(1訪問あたりの売り上げ)=CVR×注文単価を見ています。CVRと注文単価の掛け合わせなので、どちらか片方が上がれば、RPVは上がります。これまでは、RPVが上がれば良しとしてきたのですが、実際に多かったのはCVRだけが上がるパターンで、注文単価は改善されていないこともありました。
そこでKPIの変更後は、「注文単価が上がっていない場合は、サイト改善をリリースできない」というルールに変えました。ルール変更後に実施したスマートフォンのトップページデザイン変更では、CVRが微増・注文単価が向上という結果が出るまでテストを繰り返しました。LOHACOの顔ともいえるトップページにまでアクションとして落とし込めたことは、我々にとっても大きかったですね。
データの裏にあるストーリーを理解する
――御社にも、デイリーのCVRを紙に書いて、オフィスに張り出していた時代があったとうかがっています。今お話を聞いていると、データの裏に人がいる意識が深く根付いている印象を受けたのですが、これにはどういった理由があるのでしょうか?
梶井:そうした考え方が完璧に根付いているとはまだ言えませんが……、データをただの数字として見るのではなく、その裏にいる人を理解するというのは、昔から言われてきたことだと思います。今は、様々なデータが可視化できますよね。さらに、それらをIDで人に紐づけた状態で、色々な軸から考察することもできる。
LOHACOでは、データ分析にAdobe Analyticsを使用していますが、そのアドビさんの言葉を借りると「コンテクストを理解する」。つまり、データの裏で何が起きているのか、そのストーリーを理解できる環境が整ったことが、理由の一つにあると思います。
――なるほど。組織文化の観点からは、いかがですか?
梶井:経営陣は「その施策をやって、どのお客様がどうなるの?」「何でこの数字は今こういう風になっているの?」というような話をよくします。そして、これに応える時には「誰がどんな行動をしているから、この数字はこうなっている。これをこうすると、こういう風に変わります」と、ストーリーで説明することが求められます。
「誰の何を解決する施策なのか」を重要視していて、その集合体が売り上げやCVRにつながると考えているんです。こうしたコミュニケーションが当たり前になっているのは、それができる環境があるからこそだと思います。