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LOHACOがCVRを重要KPIから外した理由――その施策で誰の何を解決するのか、説明できますか?

 アスクルが展開する日用品ECサイトの「LOHACO」では、KPI設計の大きな改革が行われた。顧客満足が成長の源泉であるという考えを徹底し、サービスに関わるすべての部門でデータドリブンなPDCAを回しているLOHACOは、なぜ脱CVRを実行したのか。LOHACOのデジタルマーケティングに従事している梶井氏に話を聞いてきた。

顧客満足を担保した上での売り上げ拡大を目指して

――アスクルの展開するECサービス「LOHACO」は、なぜ重要KPIからCVRを外したのか。今回は、その理由を梶井さんに詳しくお聞きします。はじめに、梶井さんはアスクルでどのような業務を担当されているのですか?

アスクル株式会社 BtoCカンパニー ビジネスマネジメント&アナリティクス ビジネスマネジメント 梶井健吉氏
アスクル株式会社 BtoCカンパニー ビジネスマネジメント&アナリティクス ビジネスマネジメント 梶井健吉氏

梶井:私は2014年に新卒でアスクルに入社してからずっとデジタルマーケティングに携わってきました。現在の主な業務は、データ分析とその環境構築です。また、昨年からビジネスマネジメントという部署に所属し、事業企画に関する仕事もしています。具体的には、変化の激しいEC業界において経営陣の判断のサポートとなるような提案や課題分析などに取り組んでいます。

――ありがとうございます。では、早速本題に入ります。まず、LOHACOにおける重要KPIからCVRを外した理由をざっくりご説明いただけますか?

梶井:大前提として、LOHACOの成長の源泉は顧客満足にあると我々は考えています。その中で、LOHACOの主要なKPIとしてCVRを見ることは、顧客満足度を担保した状態で売り上げを拡大していくことに結びつかないと判断したので、外しましました。

 もう少し詳しく説明しますと、LOHACOでは、お客様を独自のクラスタに分類しています。そのうち、日用品は何でもまとめてLOHACOで購入し、LOHACOの世界観まで理解してくださっている方を「なんでもロハコさん」と呼んでいます。もちろん、なんでもロハコさんだけを重要視しているわけではありませんが、顧客満足度を担保した上で売り上げを伸ばしていくためには、このなんでもロハコさんを増やしていくことが大切だと考えています。

 そして、LOHACOは「くらしをかるくする」というコンセプトのもと、お客様の生活を便利にするサービスの提供を目指しています。つまり、なんでもロハコさんのように日用品をまとめてお得に購入いただきたい、「LOHACOのおかげで生活が便利になったね」と言って下さるお客様を増やしたい。それなのに、LOHACOに来てもらう度に購入してもらうというCVRをKPIとすることに矛盾を感じていたんです。

 また、なんでもロハコさんの中には、時間のある時にLOHACOを見て欲しいものをカゴに入れておき、カゴが貯まった時にまとめて購入する方がいることもデータからわかっています。こうしたデータからも、矛盾を感じていました。

CVRという大枠の数字に囚われすぎてはいけない

――そのようなCVRに対する違和感が、具現化されるまでの過程をお聞かせください。

梶井:日々データ分析をしていると、CVRという大枠の数字には色々な要因が関係していることがわかります。CVに至るまでに何があったのかをクリアにするには、その要因を毎回分析しないといけません。「この施策をやったから、CVがこう変化した」とは、なかなか説明できないんですよね。

 たとえば、先月ソフトバンクさんのCYBER SUNDAY(サイバーサンデー)で、特典として500円オフのクーポンを付与する企画を展開しました。そのクーポンを利用できる日曜日には、非常に多くのお客様がLOHACOに来られます。ですが、その多くはLOHACOを利用したことのない人達ですので、CVRは下がります。

 一方で、もちろんその日にもなんでもロハコさんはいらっしゃって、いつも通り満足してお買い物をしてくださいます。「デイリーのCVRは下がった。では、顧客満足度も下がったのか?」というと、そうではありません。

 これは非常にわかりやすい例を挙げていますが、日々のデータ分析の中で、こうした話は何百とあります。その日のCVRが下がったのか上がったのかを見ていて、本当にこれで良いのかと。LOHACOの正式な指標として、顧客満足度と結びつけて良いのかという議論が出てきた感じですね。

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この記事の著者

松崎 美紗子(編集部)(マツザキ ミサコ)

1995年生まれ。早稲田大学商学部を卒業後、新卒で翔泳社に入社。新入社員として、日々奮闘中です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/12/21 09:00 https://markezine.jp/article/detail/29803

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