データサイエンティストの育成と採用
押久保:河本さんにはそれこそ、データサイエンティストという職種が世に出始めたタイミングでインタビューさせていただいたのを、よく覚えています(参考記事)。その後のご活躍は周知の通りですが、このたびの転身には驚かされました。今年の4月から、滋賀大学で教鞭を執りながらデータサイエンティストの育成に関わっているのですよね。
河本:そうですね、学生を育成して色々な企業で活躍できる人材の輩出ができるようになったらなと。昨年春に日本で初めてとなるデータサイエンス学部が設立されまして、来年には大学院もスタートします。これまで講義スタイルでやっていましたが、来年からは、いよいよゼミ形式でより本格的に始動していきます。
押久保:大木さんは、博報堂プロダクツでデータアナリストやマーケターの採用に関わられているのでしょうか。
大木:そうですね。当社は職種別採用を行っておりますので、関わることも多いです。当社では今春にこの領域を強化しようと、データビジネスデザイン事業本部を新設しました。約45名体制となっています。いわゆるデータ分析を行う専従チームが15名ほどいまして、あとはそれをビジネスとしてファシリテーションするコンサルティングチームと、運用支援に特化したチームやオリジナルCRMプラットフォームを提供するチームの4本柱です。
私はどのチームにも属さないで、全体を見ています。当然ながら、本部全体の成長というのもひとつのタスクですので、状況を見ながら採用に向き合っているようなところですね。
人材不足とミスマッチは起こっている状況
押久保:データサイエンティストおよびマーケターともに、採用ハードルが上がっていると聞くのですが、やはり人材が足りていない状況なのでしょうか。
河本:人材不足と、ミスマッチングの両方の問題がありますね。たとえば、データ分析だけしたいと機械学習のエキスパートがぽんと企業にきても、あまり機能しないですよね。多分、そこだけに特化した仕事の切り出しは難しいので、ある程度自分で最終ゴールまでもっていけるような力が必要で。
でも数字に強くてプログラミングもできる左脳型と、課題発見や顧客に対してコミュニケーションしていくのが得意な右脳型の特徴、その全部をひっくるめて「データサイエンティスト」の言葉で片づけられている感じがしているので、そのあたりのミスマッチを起こさないようにお互いにシグナルを出す必要性があるのではないでしょうか。
大木:すごく共感できますね。僕らの場合は、コミュニケーションを実施し(クライアントの)お客様ととの関係を深め、成立させることが仕事。その中で分析というのはワンオブゼムなので、ビジネス全体を見通せて、答えを見つけていくことに主体的に参加できるような方が理想ですが、となると採用のハードルが高くなってしまう。
加えて、事業会社がこのあたりの採用を強化していることもあり、この1~2年でさらに人材確保が難しくなっているのを感じています。そこで、我々も産官学で取り組む「データ関連人材育成プログラム」に参加したり、学生のうちからお互いのリレーションを築く必要性を強く感じてきているところです。