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CM超えの成果をTwitterで実現!「きのこの山・たけのこの里 国民総選挙 2018」が成功した訳

2019/01/31 10:00

 約40年にわたり愛され続ける明治のチョコレート菓子ブランド、「きのこの山」と「たけのこの里」。既にほとんどの人に認知され、どこでも購入することができる強いブランドであるがゆえに、目的を持って購入・喫食する機会作りが難しいという、ロングセラーブランドならではの悩みを抱えていた。そこで2018年に実施された「きのこの山・たけのこの里 国民総選挙 2018」キャンペーンでは、Twitterを活用し利用者を巻き込むコミュニケーションを展開。2017年に行った、マス中心のプロモーション同様のパフォーマンスを実現した取り組みの全容を探る。

約1,600万票が集まった「きのこの山・たけのこの里 国民総選挙 2018」

 明治のチョコレート菓子ブランド「きのこの山」と「たけのこの里」。きのこ・たけのこを模した愛らしいカタチと、シンプルで素朴な味わいは老若男女に愛されており、発売からそれぞれ43年・39年が経つ現在まで国民的人気を誇るお菓子だ。

きのこの山・たけのこの里
きのこの山・たけのこの里

 2つは兄弟ブランドながら、そのカタチ・味わいの違いから「きのこ派」「たけのこ派」に分かれ、「きのこたけのこ論争」なるものがTwitterなどを中心に双方のファンによって繰り広げられ、度々話題となってきた。

 明治はこれを受け、2018年2月末から7月末までの期間「きのこの山・たけのこの里 国民総選挙 2018」キャンペーンを実施した。きのこの山を擁する「きのこ党」、たけのこの里を擁する「たけのこ党」、どっちも好きだという「どっちも党」の3党による国民総選挙で、各党にはそれぞれユニークなマニフェストが用意された。

 たとえば「きのこ党」では、映画「きのこの王国」の公開や「AI女子高生KINO」の開発を行う。「たけのこ党」では、「吉田沙保里とつくるたけのこの里」発売、アイドル「恋するたけのこ」デビュー。「どっちも党」では、「きのこたけのこウエディング」開催や「きのこたけのこMUSEUM」の開館など、様々だ。

きのこの山・たけのこの里 国民総選挙
「きのこの山・たけのこの里 国民総選挙 2018」のマニフェストの一例

 そうしたマニフェストに対し特設Webサイトで1日1回投票でき、それ以外にもパッケージの中や店頭に設置したハガキ、Twitterのツイート数・フォロワー数が換算される仕組みで、投票期間中に最も票を集めた党が勝利するという内容だ。最終的に約1,600万もの票数が集まり、勝利した「たけのこ党」のマニフェストが2018年9月以降に順次実現されていき、年間を通じて話題となったキャンペーンとなっている。

 キャンペーンの狙いはなんだったのか。両ブランドの広告宣伝を担当する明治の酒見康隆氏と、キャンペーンのプランニングをした読売広告社の内田光紀氏に、取り組みについて話を聞いた。

左:株式会社 明治 コミュニケーション本部 宣伝部 酒見康隆氏右:株式会社読売広告社 統合ソリューション局 プランニングディレクター 内田光紀氏
左:株式会社明治 コミュニケーション本部 宣伝部 酒見康隆氏
右:株式会社読売広告社 統合ソリューション局 プランニングディレクター 内田光紀氏

会社都合の広告・宣伝から双方向のコミュニケーションへ

 「きのこの山」「たけのこの里」は2つのブランドのように見えるが、ブランドマネージャー、広告宣伝担当、開発担当は分かれておらず、「きのこの山・たけのこの里」を1ブランドとして捉え、プロモーションを進行している。

 そしてこれまでは、テレビCM中心のコミュニケーション設計がされてきたが「既存の方法に限界を感じていた」と酒見氏は語る。

 「メーカーの言いたいことを、メーカー都合の言葉とタイミングで伝える一方的な方法ではなく、ファンと常につながりを持ちながら絆を強固にしていくやり方を模索していました」(酒見氏)

 そこで目を付けたのがTwitterの活用だった。既にTwitterの中では、多くのファンによって「きのこの山・たけのこの里」に関する会話が頻繁に行われており、そうした会話を増幅させ、ファンとの双方向のコミュニケーションを強化しようと、広告代理店の読売広告社に相談した。

 ファンの間で行われていた会話の中でも、特に多かったのは “きのこたけのこ論争”というワードだ。それを公式から『国民総選挙』という形で盛り上げようと考えた。

 「Twitterで注目すべきは、『私はどっちが好き』という自分の意思をSNSで誰でも簡単に発言ができて、その話題が緩いつながりの中で広がっていくところ。コアなファンに直接火に油を注ぐのではなく、誰でも参加できるようなフレームにすることを目指しました」(内田氏)

共感に必要なのはブランドの人格化

 誰でも参加できるよう、明治と読売広告社ではどのようなプランニングを行ったのか。これまで両社では、コミュニケーションを取る際に商品のおいしさや食べ方などの“物性”を訴求することが多かった。ただ、ロングセラー故に、誰もが知っている物性や新たな物性を掘り下げていくだけで共感は長続きしないと考えた両社は、“ブランドの人格化”を進めることにした。人間らしさをブランドに出して、Twitter利用者に触れ合ってもらい、共感を得ようと考えたのだ。

 そこで行ったのが、「きのこ党」「たけのこ党」「どっちも党」という、3つのTwitterアカウントの同時立ち上げだ。「きのこ党」「たけのこ党」は既にブランドキャラクターとして使われていた「きの山さん」「たけ里ブラザーズ」を、「どっちも党」には新たに用意した「キノ・タケコ」というキャラクターを党首に据え、生活者接点としながらもキャラクターではなく、各商品そのものがユニークな“人”だと感じてもらえるよう意識をした。

 「物性や商品スペックではなく、そのブランドや企業の中の人の想いに共感が生まれると思っています。今回であれば、それぞれの党のファンの方に、”マニフェスト実現を心から楽しんでもらいたい。”という各党や明治さんの想いです」(内田氏)

 各党の支持者への情報伝達やユニークなマニフェストの紹介はもちろんのこと、ファン同士の対話の発生を促すような内容のツイートも日々行われた。また、キャンペーン立ち上がりのときにはプロモツイートでCM動画への接触を促進し、カンバセーショナルカード&オートリプライを用いて各党へ投票を求めるなど、要所で広告メニューも活用していった。

 さらに、Twitterの声を傾聴しながらリアルタイムに施策を行うべく、明治と読売広告社、Twitter Japanの3社は「国民総選挙対策委員会」を発足。2週間に1度、情報共有会を開くようになった。

 中間投票結果で、「きのこ党」が「たけのこ党」に100万票以上の差をつけられたときには、柔道家でタレントの篠原信一さんを、きのこ党の党員「きのはら信一」として特設サイトで特別放送を実施。「#きのこ党へのりかえキャンペーン」と称し、高級肉やオリジナルジュエリーをプレゼントするというあえて露骨な内容をおもしろく伝え、キャンペーンを盛り上げた。リアルタイムな施策を実行することで、ファンの反応も良かったという。

中長期的な話題作りで勢いをキープ

 今までは、単発的な露出で話題を作る短期的なプロモーションとなっていた。もちろん売上も露出に比例していた。であれば、今回のキャンペーンは中長期的に話題を作り、プロモーションそのものをロングテール化すること。5ヵ月と長期にわたり実施し、いかに話題を継続して作っていくかが課題となっていた。そのため、施策や話題の切り口は、タイムリーかつ意図的に作っていったという。

 序盤で言えば、総選挙委員長に「嵐」の松本潤さんを起用した新CMや、明治が公式できのこたけのこ論争に参入したこと、ユニークなマニフェスト、著名人や企業を巻き込んだ選挙活動などで盛り上げを図った。

 中盤にも、必死すぎるきのこ党の挽回劇、露骨なプレゼントキャンペーン、篠原信一さん必死の特別放送などのユーモアあふれる話題作りで、Twitter上の会話量を増大。

 そして投票結果発表後の終盤には、たけのこ党が勝利したと松本潤さんが結果発表したり、新CMをOA・配信したり、実際にマニフェストを実現したりと定期的に話題を提供し、キャンペーンの勢いを落とすことはなかった。

 最初の1ヵ月で商品・キャンペーン関連のツイートは200万以上も集まり、商品周辺の会話の全体ボリュームは約2,000万ツイートまで増加した。

 「総得票数も1,600万に近い票をいただき、知名度やスケール感においても国民総選挙と呼べる施策にできたのでは」と内田氏も評価した。

広告・宣伝費を超えた効果で高い売上を実現

 では、商品売上にはどのような影響があったのか。キャンペーンを開始した2月から結果発表のあった9月までで見たところ、2017年度と大きく変わらない数字だったという。ただこれに対し酒見氏は「テレビCMを積極的に出稿していた2017年と同様のパフォーマンスを獲得できているのが成果として大きい」と語る。

 「時期によっては売上向上が2ヵ月程度継続し、前年同月比140%を出したこともありました。これは長期にわたり、話題を提供していった結果だと思っています。流通の方々も次にどんな施策をするのか気にかけてくれて、期待値が上がっているのも嬉しい悩みです」(酒見氏)

 加えて、酒見氏は「Twitterアカウントを立ち上げたことで、フォロワー数としてファンの数が見えるのは大きな資産」ともした。今後もファンにアプローチできる媒体として、Twitterに大きな期待を寄せているようだ。

 ちなみに、ここまでの結果を出せたのは、ブランドからの発信だけでなく、外部メディアによるTwitter上の話題をもとにした記事での情報拡散や、外部メディアが運営しているTwitterでの発言が話題の起点になったりと、外部の力の助けも大きいと酒見氏と内田氏は明かした。

 テレビ露出が34番組(68回、ラジオ2番組含む)、新聞・雑誌は46記事、Web露出1,500記事以上と広告換算すると圧倒的なPR効果になったことに加えて、取り上げられた論調もキャンペーンやブランドを真正面で捉えていただき、非常にポジティブでユニークなものになったという。

 「デジタル施策を主軸にしたとはいえ、テレビの力は大きいと感じています。番組で取り上げてもらうには巷で話題となっているほうが取り上げやすいですし、突っ込みどころもあるほうが良いわけですが、我々にとっての巷がTwitterだったわけです。ですので、話題作りには力を入れました」(酒見氏)

元気を与えられるようなお菓子に

 最後に今後の展望を両氏に聞いた。内田氏は「利用者とブランドの対話を活性化したい」とした。

 「今後対話を活性化させる上で欠かせないのは、コアなファンを見つけることです。たとえばファンミーティングを行い、その中で出てきた声をもとに商品開発を行ってコミュニケーションをしていくといった取り組みを通じて、ブランドと利用者の間の絆を深めていきたいですね」(内田氏)

 「今後も、今回のような広告・宣伝費以上の成果を出せる仕掛けを考えたいですね。宣伝費は有限である以上、いかに工夫できるかが重要です。そのために、今回作り上げたファン基盤を拡大していきつつ、お客様とのコミュニケーションを活性化したいです。最終的には、きのこたけのこブランドを介した会話でお客様に元気を与えられるようなお菓子として役に立ちたいです」(酒見氏)

 今回のキャンペーンで長年の“きのこたけのこ論争”に決着がついたかと思われたが、いまだに関連のツイートは多く発生している。両社が今後どのような取り組みを行うのか、非常に期待が高まる。

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