アプリDL数が前年比1.7倍に/熱気の“成分”をTwitterから分析
異色のコラボで話題をさらうキャンペーンの目論見は、みごとに的中した。第1弾のテレビCM放映期間中、「an」公式アプリのダウンロード数は前年同期比1.7倍を記録。Webでの「an」の指名検索数も、同1.4倍と急増した。
この熱気に含まれる、いわば“成分”の分析に用いられたのがSalesforce Marketing Cloudの「Social Studio」だった。Social Studioは、Twitter、YouTube、Facebook、Instagramなど、8種類のソーシャルメディアのアカウントを一元管理できるマーケティングプラットフォームで、投稿コンテンツのパフォーマンスを可視化し、計画的なソーシャル運用を実現する。またキーワード検索により、自社商品・サービスに関する投稿をリアルタイムで発見。テキスト・画像分析により、消費者の動向を瞬時に捉えることが可能だ。現在28言語に対応しており、世界中のソーシャルメディアをリスニング対象のデータベースに格納している。
具体的な活用法について、亀田氏は「テレビCMへの言及時に含まれそうなキーワードを同ツール上で設定し、それらのワードがTwitterで使用された数の日次集計をもとにソーシャル広告の投下量を変え、特に関心の高いトピックについては追加情報のツイートも行いました」と振り返る。
森氏によると、テレビCMを中心とした従来型のブランド認知施策では長らく、前後の番組視聴率をまとめた広告代理店の「月次報告」を待つのが一般的だった。「コンバージョン向上の施策を『日次』で回す獲得領域に比べ、改善サイクルの遅さは否めませんでした」と語る同氏は、ソーシャルに現れるテレビCMへの反響を重要視。「話題の継続性やキャラクター起用の成否に関する知見を自動集計してくれるSocial Studioは願ってもないツールでした」と話す。
対象層の兆候をとらえ「継続」と「新機軸」のバランスを取る
同社のSocial Studioの運用は、亀田氏を主担当とし、会社のソーシャルアカウント担当者など関係者全員で同じ画面を共有する仕組みだ。
「最初に多数のキーワードを設定する必要がありますが、いったん設定を終えると、従来は手作業で検索を繰り返す以外に方法がなかった定性面での反応が自動集計され、非常に捉えやすくなりました。ソーシャルの温度感を担当者間で共有できるようになったのもメリットです」(亀田氏)
今回のテレビCM展開では、関連するツイート量の経時変化や、好意的な反応の割合、テレビCMの要素で言及が多いポイントなどをSocial Studioで分析し、続編の内容に反映させることとなっていた。第1弾の放映開始後、Twitterではアニメ版『ポプテピピック』で声優の配役とキャラクターの作画が毎回変わることが話題になっており、「an」のテレビCMでも同じ趣向を期待する声が上がっていた。「これを拾わない手はない」(森氏)と、さっそく7月に声だけ差し替えた別バージョンを公開したところ、アニメ版のファンが即座に気づき、Twitter上でも情報が拡散した。
さらにここで作画も入れ替えるかと思いきや、10月に公開された第2弾ではなんと、ポプテピピックの起用自体を早々に終了。浜辺さんのパートナーとなるサブキャラクターは、お笑いコンビ「アンガールズ」に交代した。半年で浸透してきた「anが、あんじゃん!」というキャッチコピーに、同コンビの略称「アンガ」をかけるという新機軸だった。
その背景について、亀田氏は「ポプテピピックを利用したマニアックな趣向は支持を得ていましたが、全体的な反響がやや下降気味なこともソーシャルの動向でつかんでいました」と解説。そこで、さらにニッチを突き詰めるのはやめ、「『今度はそう来たか』という“裏切り”」(同氏)で、盛り上がりの再燃に懸けた。
結果、第2弾のキャンペーンは「あらゆる指標で『an』として過去最高のブランドリフト」(亀田氏)を達成。求職者からの知名度・好感度アップだけでなく、求人企業からの問い合わせ増加にもつながったという。