デジタルとの融合により生まれた、テレビの新しい視聴習慣
米国では、日本以上に「テレビ離れ」が叫ばれています。しかし蓋を開けてみると、テレビの視聴時間(テレビディスプレイの前に居る時間)は、Netflixをはじめとした新しい視聴習慣も取り込みながら、実は減っていないという事実が見えてきます。

出典: the first-quarter 2018 Nielsen Total Audience Report
このデータからわかるように、デジタルへの移行とテレビの視聴時間の減少は、領域の融合がより進んだ今日では実は二律背反ではないことがわかります。Netflixの事例のように、映画や連続ドラマなどの長尺で「リッチ」なコンテンツは、より大画面の方が見やすく、テレビでの視聴につながっています。
ただ、それ以上に普遍的なポイントは、テレビディスプレイがマルチ・パーソン・デバイスであるということです。やや社会学的になりますが、世の中のデジタルデバイスはどんどんパーソナライズの方向に進んでいます。ということは、複数の人々が同時に同じ場所で一つのコンテンツを見るには不便な環境になってきており、その中でテレビディスプレイは唯一、多くの家庭にあり、複数での視聴が簡単にできるデバイスだといえます。
単身世帯は、パーソナルデバイスだけで事足りるかもしれません。しかし家族ができると、「同じデバイスで・同じコンテンツを・同時に見る」という行為が、家族の大切なコミュニケーションの一つとなります。同棲しているカップルが、いつもそれぞれのスマホでYouTubeを見ているだけなら、別れた方が手っ取り早いかもしれません。子育て中のファミリーが、子どもにAmazon Prime Videoを見せつつ、同じ空間で家事をすることも大切な家族の時間のあり方です。
テレビは重要なマルチ・パーソン・デバイスとして、視聴者のメディア接触シーンにおいてユニークな特徴をしっかり持ち続けているということが、本質的に「テレビ離れ」を皆さんが思う以上に防いでいるといえます。
日本には世界トップのテレビ広告市場が存在している
米国の投資家に日本のテレビのパワーを伝えるとき、私は決まって「バルス祭り」の話をします。『天空の城ラピュタ』が放映されると、「バルス!」と言うセリフが入る瞬間にツイッターのツイートが殺到し、ツイッターのサーバーが落ちたこともあるという、皆さんご存知の話です。それまでテレビに対して懐疑的だった投資家でも「一チャンネルの、たった一つのリアルタイム番組に、それほどの力があるのか」と驚かれます。
特に日本市場は無料で見られる地上波・BS放送が一般的、かつ局数も少なく、視聴が集中しているため、諸外国と比べテレビ枠一つひとつは桁違いのパワーをもっているのです。
実際に、当社のクライアントである外資系消費財メーカーからも、各国と比較して日本市場は特に広告予算に占めるテレビの割合を高めに設定しているという話を良く聞きます。様々な国でPDCAを回してきた彼らから見ても、日本におけるテレビメディアのリーチ・影響力の強さは肌身に染みて理解されているのです。
もう一つ興味深いデータがあります。世界のテレビ広告市場について見てみると、国ベースではもちろん米国が世界最大なのですが、都市圏ベースでは東京(関東)が圧倒的な1位なのです。当社が世界中のテレビ市場を調査してきたのち、起業の地の一つに日本の東京を選んだのは、他でもない日本、特に関東に集中している活発な視聴者と、それに支えられた広告投入が表裏一体となって、世界トップのテレビ広告市場が存在しているからです。