2018年2月、広告業界に一つの激震が走った。それは、日本テレビが「1枠15秒」からCM枠を購入できる新サービスASSをローンチしたことだ。今回は日本テレビスポットセールスの営業戦略を陣頭指揮する、営業局 総合営業センターの巽直啓氏に、ASSが誕生した背景や広告主の活用事例について、TVISION INSIGHTS(以下、TVISION)の郡谷康士氏が迫った。
日本におけるAdvanced TVの先がけ「ASS」
郡谷:日本テレビが先頭をきって取り組んできたASS(アドバンス・スポット・セールス)は、日本におけるAdvanced TVの先駆けの一つです。今回は、日本におけるAdvanced TVについて、何を考え、何に取り組み、どんな未来が待っているのかを、日本テレビの巽さんにうかがっていきます。そもそもASSはどのような背景から始まったのでしょうか?
巽:ASSのローンチは2018年の2月でしたが、着想は4年前にさかのぼります。海外では当時オーディエンスデータビジネスは既に実現していたので、僕らにもできないはずはありません。
いちばんの動機は、広告主のニーズに100%応えきれていないという焦燥感からでした。広告主のニーズは大きく2つ、(1)オーディエンスデータを活用してバイイングしたい、(2)アクチュアルベースで取引したい、というものでした。
これを既存の商流の中で行うには、在庫管理ができず、安定したセールスができなくなります。とはいえ、広告主のニーズに応えるにはどうすればいいのかと考えたのが、ASSの着想のきっかけとなりました。

日本テレビ放送網株式会社 営業局 総合営業センター スポット班 デスクチーフ
巽 直啓(たつみ・なおあき)氏
2001年4月日本テレビ入社。入社から2008年まで営業局スポット営業部でスポットセールスに従事。その後、経済部、社会部、ネットワークニュース部などで記者としても歴任し、2013年より再びスポット営業で活躍。海外のCM購買方法などを研究・発表するなど、社内外での活躍も幅広い。
郡谷:ASSは、広告主が欲しい枠を、15秒1本から買うことができる仕組みですよね。たとえ大きなグロス予算がなくても、数百万からでも利用できるので、CMを活用する門戸がスタートアップ企業などにも開かれました。
巽:はい。また商品化する時に、2つのことを重視しました。一つは完全に新しい商品にすること、そしてもう一つはトランスペアレンシー(透明性)を保つことです。
まず、なぜ新商品にしたかというと、最初から新商品だと定義してしまえば、既存のセールスの仕組みを邪魔したり、支障をきたしたりせず、新商品の範囲内だけで完結するからです。それは、この新しい売り方を、根付かせるためにとても重要な要素でした。
それから、デジタルでもトランスペアレンシー(透明性)が課題になっていたので、誰でもデータを活用しやすいように、圧倒的にわかりやすく作ろうと考えました。スポットセールスって、本当に独特の世界で、複雑なんですよね。だから、納得して購入できるようなわかりやすい商品にしたいと考えた結果、ASSのサイト上ですべてのCM枠の値段を公開することにしたのです。
高まる危機意識/ASSで新たな広告主の支持を得たい
郡谷:ここ数年間で、テレビ広告市場や周辺環境は様変わりしていますが、どういった変化が大きかったと感じていますか?
巽:この1年で、ASSってすごいねと言ってもらえるようになったのは、すごい変化だと思います。また、テレビ広告セールスへの危機意識が数段上がったなと感じています。
郡谷:危機意識ですか。
巽:やはり売り上げが作りづらい環境になってきました。おかげさまで弊社は好調を維持していますが、タイムセールスもスポットセールスも、他局を含めて市況が良いとは言えません。そこにGAFAが台頭してきて、デジタルシフトが進んでいます。この状況は私たちにとっても大きな脅威です。
一方で、コンテンツ力で言えば、日本のテレビ局はまだまだ強いと思います。けれど莫大な制作費を費やしてコンテンツを作っている米Huluや米Netflixを凌ぐには、コンテンツにもっと制作費を投入しなければなりません。そのためには、営業サイドが売り上げを上げることが不可欠なので、ASSで新たな広告主の支持を得て、売り上げ拡大につなげたいと考えています。
郡谷:Netflixがコンテンツに対して、グローバルで年間1.2兆円を掛けていることが話題になっていますが、日本のテレビはそれ以上のコンテンツ投資を継続している、というふうに考えれば、テレビのコンテンツ力の強さをイメージできますよね。
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- この記事の著者
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郡谷 康士(グンヤ ヤスシ)
TVISION INSIGHTS株式会社 共同創業者/代表取締役社長
東京大学法学部卒。マッキンゼー・アンド・カンパニーにて、事業戦略・マーケティング戦略案件を数多く担当。リクルート中国の戦略担当を経て、上海にてデジタル広告代理店游仁堂(Yoren)創業。2015年よりTVISION INSIGHTSを創業し、代表取締役社長...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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