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データで再構築するテレビマーケティング

データドリブンなテレビマーケティングの先駆け 日本テレビの「ASS」が仕掛ける挑戦


データと感覚、どちらを重視すべきか

郡谷:ASSが始まって1年ほど経ちましたが、どのような広告主がどんな風に利用していますか。

巽:当初の目論見通り、広告主が必要とする視聴率を含めた視聴データを見て、最も効率的な枠を大量に購入するケースや、特定の番組だけを選んで購入するケースもあります。

 日本テレビの目玉枠、『世界の果てまでイッテQ!』(日曜20時~)や『月曜から夜ふかし』(月曜23時59分~)の前後だけを1本だけ購入する広告主や、ちょっとずつ線引きをずらして、どこの枠が最も効果があるかを毎月試しているという広告主もいます。

 また、地方の老舗広告主では、東京でCMを打ってみて、どれだけオンラインストアのコンバージョンに影響が出たのか、トライアルをしています。中には、ASSで購入していた広告主が、今年に入ってタイムの提供へつながり、より大きな売り上げがつくれたケースも出てきています。テレビの広告効果は高いと実感してもらうきっかけにもなっています。

 それから、長年の懸念だったフリークエンシー過多の問題にも、一定の効果があるようです。これまで広告主から、高齢者層を中心に1回のCMが20回以上当たってしまうことが懸念されてきました。それを克服できる可能性が見えてきたのは、非常に良いことだと思います。

郡谷:幅広い広告主のニーズを押さえていらっしゃいますね。その中でもテレビマーケティングにおいてもPDCAを回す広告主が使っているのは興味深いです。トライアルの敷居を下げ、広告主がテレビでのチャレンジを始めやすい形にされたことに、大きな可能性を感じます。

巽:私自身が嬉しかったのは、クリエイティブで遊ばれる広告主の存在です。たとえば、『3時のおやつは文明堂~♪』のように、素材の中に時間が入っているようなクリエイティブがありますよね。それを15時に流すのって、おもしろいと思いませんか。ASSであれば、時間や曜日を指定することが可能です。

郡谷:確かに私たちも、広告主から「コンテクストマッチング」という言葉を聞きます。わかりやすい例では、「自社のCMに出演している女優が、主演を務めるドラマの枠には出稿しておこう」というようなことですよね。

 みんなそれを経験則で、もしくは、「きっと効果があるだろう」という願望でそこを購入していましたが、実際それは半信半疑でした。そこを、TVISIONなどのデータで「他の枠に比べて何%よく見られています」という数値が出れば、広告主もPDCAが回しやすくなります。

巽:僕はCMが大好きなので、視聴者に「CMって、おもしろい!」と思ってもらえるきっかけを作りたいんです。ASSで放映時間を指定できることで、CM素材が均一的なものから、様々なバラエティに富んだものへと多様化し得るのではないかと期待しています。

CMにおける投資対効果の考え方

郡谷:広告主からは「ASSって高い」と言われることはありませんか?(笑)

巽:言われます……! でも、それだけの価値があると思っていますし、あえてそうポジショニングしています。

郡谷:その自由さや枠の価値を提供できるから、っていうことでしょうか?

巽:ASSの価格設定は、単価ベースでのイメージは、「Time(NT/LT)<通常スポット< ASS<スポットのみどり」としました。「アドバンス(先行して)」で、2ヵ月前に買ってくれるなら、お得に「のみどり」できますよ! という考え方なんです。

のみどり:CMを放映したい曜日や時間、番組をピンポイントで指定し、希望の枠だけ買い付けすること。

郡谷:先行割引みたいな感じですね。

巽:でも、通常のセールスからすると、「のみどり」にあたりますので、通常のスポットセールスよりも高くさせてくださいね、という発想です。広告主の皆さまには、従来のスポットやタイムと、ASS、この3つを自由に組み合わせて使って欲しいと考えています。実は今通常のスポットで「のみどり」を希望する広告主が急激に増えているんです。

郡谷:それは興味深い動きですね。既存広告主でもですか。

巽:そうです。満遍なく買うのではなく、自社にとって効率的に成果が出る枠を、広告主はデータから既に認識しています

 そして、ROIベースで広告を評価する広告主も増えてきています。たとえば、『世界の果てまでイッテQ!』という枠が仮に15秒/600万円でお売りしたとしますよね。これは、さすがに高いと感じるかもしれません。

 けれど、この『イッテQ!』という番組にCMを1本放映することで、広告主に3,000万円の利益が上がったとしたら、それは適正な投資と言えます。今後、広告主は「どれだけの宣伝費を投下したら、どれだけリターンがあるのか」をさらに求めると思います。効果測定の課題がクリアになれば、ASSの売り上げは、さらに上がると思います。

郡谷:効果測定や購買行動につながったデータがそろうことで、ASSのような新しい売り方の価値がより浸透していくのですね。

巽:だからこそ、ASSにはデータベンダーさんの協力が不可欠です。TVISIONさんをはじめ、購買データを有するデータベンダーさんとも協力関係を結び、多様な効果測定手段を揃えていきたいと考えています。

次のページ
ASSは、CM枠を売買するプラットフォームのベースに

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この記事の著者

郡谷 康士(グンヤ ヤスシ)

TVISION INSIGHTS株式会社 共同創業者/代表取締役社長
東京大学法学部卒。マッキンゼー・アンド・カンパニーにて、事業戦略・マーケティング戦略案件を数多く担当。リクルート中国の戦略担当を経て、上海にてデジタル広告代理店游仁堂(Yoren)創業。2015年よりTVISION INSIGHTSを創業し、代表取締役社長...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/07/11 08:53 https://markezine.jp/article/detail/31428

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