複数企業の「こと連携」で「新しい体験」を生み出す
原嶋:「購入」に焦点を当てると、やはりECはメリットが大きいですよね。「リアル店舗を体験の場にする」という奥谷さんの考えは、非常に理にかなっていると思います。ただ一方で、「新しい体験」を生み出すのは、なかなか簡単なことではないですよね。
奥谷:一企業で生み出せる「体験」には限りがありますね。そのため、これからは「新しい体験」の提供を目指し、企業同士がつながる「こと連携」が必要になってくると思います。この企業同士の連携のことを、私は「アライアンスマーケティング」と言っています。
たとえば、「時短」をキーワードに連携するなら、20分で主菜と副菜を作ることができるオイシックスの「ミールキット KitOisix」、朝ごはんの時短にはカルビーの「フルグラ」、家事の時短では、「ルンバ」や家事代行サービスの「カジタク」とのアライアンスが考えられます。
こういった企業がネットやイベントの企画・運営において、それぞれの得意分野を掛け合わせることで、「新しい体験」が生まれ、お客様との距離は近付きます。

原嶋:「こと連携」によって店舗作りも変わりそうですね。
奥谷:そうですね、リアル店舗を作る際にも、この「こと連携」という考え方は活かせます。たとえば、キャンプ用品と車メーカーを組み合わせた店舗があれば、キャンプスタイルにフィットする車の提案につながり、セットで売れるかもしれません。
「デジタルを活用したカスタマージャーニー」を設計する
原嶋:続いて「リアル店舗におけるデジタル施策」についておうかがいしたいと思います。先ほど「オフライン(リアル店舗)からオンライン(EC)へつなげる仕組み」を作ることが重要とおっしゃっていましたが、奥谷さんはリアル店舗において必要なデジタル施策をどのようにお考えですか。
奥谷:前提として、今の小売業界では、デジタルマーケティング施策があまり盛り上がっていないように感じています。「アドテクを活用して、ネット広告を配信する」ことが、小売業界では「デジタルマーケティング」の主流になっているように思います。もちろん、これだけでもある程度売り上げは上がるかもしれません。しかし、デジタルのタッチポイントを活用している状態にすぎないため、複雑化する消費者行動に対応できなくなるでしょう。
これからは、「オンラインとオフラインの行き来」を自然とお客様が行ってしまう、「デジタルを活用したカスタマージャーニー」を設計し、それに基づいたデジタル施策を行っていく必要があるではないでしょうか。
