より投資効果の高いテレビCMを出稿する
今まで、テレビマーケティングの議論の中心であった世帯視聴率や個人視聴率が「量」の議論であるのに対して、「視聴質」は量あたりの質の高低を表す指標となります。VI値、AI値と、テレビの「視聴量」であるGRPを組み合わせることによって、テレビのビューアビリティを考慮した実際の視聴を計測することが可能となりました。
この数値を分析したところ、同じGRPでもビューアビリティの高いテレビCM、すなわちVI値、AI値の高いテレビCMのほうが認知が大きくなることがわかってきました。当社の調査によると、VI値×AI値の高いテレビCMは、低いテレビCMと比べて、1,000GRP時点で平均6.6ポイントも認知度が高いという結果が出ています。

同じ量を投下しても、視聴質の違いによって、効果にこれだけ差が出ることが明らかになっています。デジタルと同様にテレビも視聴質と認知は相関関係があり、同じ量、ひいては同じような予算の中でも、視聴質の高いテレビCMのほうが、より投資効果が高いテレビCMになるということがわかります。
更には同じ視聴質の中でも、VI値とAI値の傾向の違いから見えてくることもあります。VI値は時間帯に強く相関することがわかっています。プライムタイムや土日日中など、生活様態上、テレビの前に人が相対的に多く居る時間帯にはVI値も高い値となります。つまり、時間曜日に即した放送枠を評価するのに、VI値が有用な指標として活用できます。
一方でAI値のほうは、同じ時間帯、ひいては同じ番組シリーズの中でも登場するゲストや、テレビCMの内容によっても大きく異なっており、注視を集めるかどうかという視点から、よりコンテンツ/クリエイティブの評価に活用することが多いです。そこで、VI値とAI値を双方見ることによって、テレビCMの効果が充分でなかったときに、問題はクリエイティブなのか、それとも番組枠なのかという、今までできなかった課題の切り分けができるようになります。
0~3歳児の母親は、いつテレビの前にいる?
では実際こうしたデータを用いて、どのようにテレビCMの効果改善を行えば良いのでしょうか。VI値を示すヒートマップを用いて、効果改善を行った事例があります。
ある消費財メーカーでは、0~3歳の乳幼児を持つ母親をメインターゲットにテレビCMを展開していました。そこで0~3歳児の母親の時間帯別VI値を見てみると、平日11:00~15:00(昼・午後帯)の数値が高く、プライムタイム以降の数値は大きく下がっていることがわかりました。ターゲットは、通常「テレビの前に人がいない」とされている平日の日中や午後にこそテレビの前にいて、逆に「多くの人がテレビを見ている」と言われているゴールデン・プライム帯や土日にテレビの前にいないという実態が浮かび上がってきました。

そこで同社は、昼帯の各放送局の視聴質ヒートマップを活用し、特に0~3歳の乳幼児を持つ母親のVI値の高い番組に集中して出稿することに決めました。絵柄や時間帯の重みづけを変え、放送局と交渉してバイイングのターゲット枠を変更することで、大幅な効果改善につなげたのです。
リアルな視聴態勢をデータ化することで、テレビの効果をこれまでとはまったく違う見方をすることができますし、こうしたデータに沿ってメディアバイイングを変えることで、テレビCMのビューアビリティを向上させ、見られ方をコントロールすることができるのです。