BtoBマーケティングにおける「ソートリーダーシップ」とは
――次に、中東さんが現在御社で注力されていることについて教えてください。
中東:これは弊社のマーケティングチーム内でも共有していることですが、今は対外的にソートリーダーシップを獲得することに重きを置いています。「ソートリーダーシップ」という言葉に馴染みがない方もいらっしゃるかもしれませんが、これは「ある企業の課題に対して解決策を持ち、第一人者であるという信頼・認知度」を指すような言葉です。
顧客の購買プロセスを考えたときに、BtoC領域では個人の感情・情緒を主体とした「AIDMA」「AISAS」などが挙げられますが、BtoB領域において情緒購買はありません。購買するのは企業なので、意思決定者と購入提案者が異なりますし、金額が大きくなると実際の購買までに社内で複数の人間が合意形成をしていく必要があるためです。
BtoB領域の購買プロセスでは具体的に、企業が課題を明確化したあとに、まずは「ロングリスト」という形で5~10社ほど課題解決をしてくれそうな企業をリストアップします。そして、そこから「ショートリスティング」という過程の中で実際に提案を受けたいと思う企業を3社ほど抽出。提案内容を比較検討の上、最終的には1社にまで絞ります。最も重要なのは、これらのプロセスでどう生き残るか。そのために求められるのが、先ほど申し上げた「ソートリーダーシップ」です。
――「ソートリーダーシップ」獲得のために、御社で行っている施策があれば教えてください。
中東:「KDDI DIGITAL GATE」は、その施策のひとつです。専任のファシリテーターがお客様とワークショップを行うことで、新しいビジネスアイデアを生み出すという取り組みです。そのアイデアを具現化するために、アジャイル開発を行う部隊が常駐しお客様のビジネスアイデアを実際にプロトタイピングまで持っていきます。必要に応じて、パートナー企業さんとコラボレーションしたり、最新の5G実証環境を活用した実証実験も行ったりもしています。

ニューフロンティアであることが最大の魅力
――「ソートリーダーシップ」を獲得していくために、BtoBマーケターができることは何でしょうか?
中東:先ほど言及した購買プロセスを踏まえ、お客様が取り組むべき課題と自社のバリュープロポジションを定義していくことですね。これこそが、マーケターの役割だと思っています。自社の提供する商品・サービスの価値を、市場に対して提案していくことが重要です。
もちろん、デマンドジェネレーションもBtoBマーケターの重要な仕事です。たとえばGDPR(General Data Protection Regulation:欧州一般データ保護規則)や働き方改革の関連法案の施行への対応など、時期が決まっている「コンペリングイベント」や、現状のままでは情報漏えいやハッキングのリスクが上昇するために新たなセキュリティソリューション導入を呼びかける「リスク・オブ・ステータス・クオ」といった、顧客企業内での投資優先順位を上げる考え方を持つことが大切だと感じています。
――中東さんにとって、BtoBマーケティングの魅力とは何でしょうか?
中東:マーケティングとして、ほぼニューフロンティアであることではないでしょうか。BtoC領域と比較してまだ分析が進んでいなかったり、手がつけられていなかったりする領域が多くあるように感じています。元々、私は他の誰かが成功したものを引き継ぐのが苦手で(笑)。BtoBマーケティングは、自ら動けば他に誰もやっていないことを開拓できる可能性が大いにあります。
BtoC領域と比べて進歩の速度は遅いかもしれませんが、少しの成長が大きな進歩につながるのも魅力のひとつです。
