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BtoBマーケ虎の巻

BtoBマーケの戦略策定 損する会社と得する会社を比べてみた


「得する会社」になるために決めておきたい3つのこと

 次に意識したいのが、「経営・事業戦略上、マーケティング部門として、どれぐらいのリード数、商談数、売り上げを創出する必要があるか」を具体的に定めることだ。

 損する会社は、目標が具体的に決まっていない。「売り上げを伸ばしたい」「Webサイトからのお問い合わせを増やしたい」といった目指すものはあっても、「いつまでに、いくらの売り上げを増やしたいのか」「いつまでに、Webサイトからのお問い合わせを何件に増やしたいのか」といった、目標数値や達成までの期間を定められていないのだ。

 しかし、目標数値と達成までの期間によって、取るべきマーケティング戦略・施策は変わってくる

 例を挙げると、オウンドメディアのような施策は、成果が出るまでに半年~1年以上の期間が必要になる。また、集客経路は検索エンジンとソーシャルメディアが中心となるため、月のリード獲得数や問い合わせ数にも、一定の上限がある。つまり、「2ヵ月後に1,000件のリードを獲得する」という目標を達成しようとした場合、オウンドメディアは適さないのだ。この例から、目標を具体的に定めて施策との不一致を防ぐ重要性が感じられるのではないだろうか。

 得する会社は、目標数値と期間を具体的に決めている。「2019年の末までに、300件の商談を創出し、10億円の売り上げを創る。そのために、Webサイトからのインバウンドリードを1,000件創出する」というような形だ。

 「2019年の末までにインバウンドリードを1,000件創出する」と決めれば、Webサイトにどれぐらいの人を集客する必要があるか、そのために、リスティング広告やFacebook広告にどれぐらいの額を出稿する必要があるか、出稿金額は2019年の予算内に収まるのか、収まらないのであれば、他の代替手段はあり得るのか、などの議論ができるようになる。

 「得する会社」になるためにまず決めておきたいのは、次の3点だ。

・短期、中長期でどれくらいの売り上げや顧客数(受注数)にしたいのか
・そのためには何件の商談やリードを生む必要があるのか
・ブランドとしてどのような状態になっていたいのか

 また、目標を具体的にするための「因数分解」には、以下の図を役立ててほしい

 こうした要素を一つひとつ検討していくのは骨の折れる作業で、一見遠回りをしているように見えるかもしれない。しかし、施策の実施で想定通りの効果を出すために欠かせないステップだ。手を抜かずに進めてほしい。

施策ごとの特性を理解せよ

 注力する顧客層と具体的な目標が決まった後は、目標達成のために必要な打ち手を考えていく。この時、損する会社は、「とりあえず、コンテンツマーケティング」「とりあえず、MAツール」と施策を選択してしまうが、BtoBマーケティング施策には明確に得手不得手が存在する

 才流では、顧客の検討段階ごとに適したマーケティング施策を、次のようにマッピングしている。

 たとえばFacebook広告は、顕在層にリーチするよりも、潜在層・準顕在層にリーチするのに適している。ユーザーがFacebookを使う目的は「タイムラインに表示される、友人の投稿を見る」であって、「製品・サービスを探す」「業務上の悩みを解決する」ではないからだ。

 顕在層・明確層へリーチしたいのであれば、Facebook広告よりも、ユーザーが能動的に情報を探索するSEM(リスティング、SEO)の方が成果を出しやすい。また、集客したユーザーを適切に問い合わせに導くためには、サービスサイトの改善やランディングページの制作・改善が有効なことが多い。得する会社は、こうした施策ごとの特性を理解し、打ち手を選んでいるのである。

 また、顧客の情報行動・購買行動には、業種・業界/会社規模/部門/役職ごとに特性があることも、忘れてはいけない。ネット普及率が80%を超え、モバイル端末の普及率に至っては95%近い現代においても、FAXや紙の文化が優勢で、GoogleやYahoo!で業務に関する情報を検索していない、という業種・業界も存在している。

 自社の顧客が普段、どのような時に、どのようなメディアで情報収集を行い、購買の意思決定をしているかは、読者の皆さんの会社独自で調査する必要があるだろう。才流でお勧めしている調査方法は、既存顧客や見込み顧客5名程度へのインタビューだ。日々の商談の最後に10分程度時間をもらい、

・普段、◯◯をしようとする際に何に困っているか。それはなぜか。
・普段、◯◯を検討する際にどんな言葉で調べるか。それはなぜか。
・最近、◯◯についてどのようなメディアで情報に接触したか。それはなぜか。

などを聞いてみるという方法。すぐに実践できる上に、自社のマーケティング活動に役立つ、多くのヒントを得られるはずだ。

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非効率な打ち手を避けるために

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この記事の著者

栗原 康太(クリハラ コウタ)

1988年生まれ、東京大学文学部行動文化学科社会心理学専修課程卒業。 2011年にIT系上場企業に入社し、BtoBマーケティング支援事業を立ち上げ。事業部長、経営会議メンバーを歴任。2016年に「才能を流通させる」をミッションに掲げ、経営者・事業責任者の想いの実現を加速させる株式会社才流を設立し、代表取締役に就任。 アドテック東京などのカンファレンスでの登壇、宣伝会議・広報会議など主要業界紙での執筆、取材実績多数。 Twitterアカウント(https://twitter.com/kotakurihara) | Facebookアカウント(https://www.facebook.com/kota.kurihara)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/06/05 15:26 https://markezine.jp/article/detail/30492

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