購買行動データの具体的な活用
――具体的には購買行動データをどういった形で活用されているのでしょうか?
松中氏:新橋の店舗は、ECサイトとの連動を考えたコンセプトショップです。加えて、お客様の動きをデジタルで解析し、店舗施策の効果を検証するというミッションが課せられています。まず、買上客数と入店客数、それに対する買上率を測定しました。それだけでも、これまで見えていなかった事実が見えるようになりました。これまで客数と言うと、レジ通過客数でしかなかったからです。測定と分析の結果、ピークタイムの買上率は約10%だということがわかったのですが、これが果たして高いのか低いのかというところから判断しなければなりませんでした。

松中氏:ABEJAさんに聞いたところ、アパレル業界で高いところだと15%くらいの水準とのことでした。我々はシャツの専業で、お客様は明確な購入目的を持って来店されているので他のアパレル店よりも買上率は高くあるべきだと危機感を覚えました。
――買上率に課題があることがわかったわけですね。改善のためのどのようなことに取り組まれたのでしょうか?
松中氏:棚ごとにどれだけ手を伸ばしたかも測ることができていますので、その棚に置いてある商品の販売実績と比べればその棚の買上率が出てくる。それを最適化することで全体の買上率を上げられるのではないかというアプローチをしています。
好不調の原因と対策
――他の導入店舗では、どのような気付きがあったのでしょうか?
松中氏:亀有は標準的なお店ということで、将来的な横展開のことを考えて導入しました。錦糸町は好調店舗と言われるお店で、五反田は不調店舗と言われるお店です。その2店の分析結果から、好不調の原因がおぼろげに見えてきたところです。
実は不調店舗の入店率はかなり高く、好調店舗は逆に低かったのです。ただ、最終的な買上率が倍くらい違う。それで最終的な売り上げに差が出ているわけです。不調と言われているお店でも入店率が高いということは、ちゃんとヒットさせることできれば売り上げにつながるポテンシャルを持っている可能性もあります。

松中氏:不調店舗の買上率に影響している要因も調べてみました。すると、在庫単価と取引単価でかなりのギャップがあるということがわかりました。
――実際に買われている商品と店頭に並んでいる商品のラインアップに差があったということでしょうか。
松中氏:ええ。そこでMD、商品構成を変えるといった対策が講じられるようになりました。今まで不調だよねと言われていたお店も結局は他店と売上額の比較でしか見られていなかったわけです。そのお店の潜在的なポテンシャルに目を向けられるようになったわけです。好調だと言われているお店についても入店率を見ると、まだまだ伸ばせる余地があるかもしれません。店舗スタッフの評価の基軸についても、より公平なものが作れるのではないかと思っています。