SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

ソーシャルメディア その進化と活用

『おっさんずラブ』に学ぶ、SNSで戦略的にヒットコンテンツを生む次世代メソッド

各クラスタを意識した施策投下が、攻略の鍵を握る

 では、『おっさんずラブ』がこれらのクラスタに効果的にアプローチできたのは偶然だったのでしょうか? 『おっさんずラブ』がおもしろいドラマであったから、それぞれのクラスタは反応したのでしょうか? 

 もちろんコンテンツの面白さは非常に重要です。しかし、『おっさんずラブ』はおもしろいドラマであっただけでなく、SNSを活用した様々な施策を巧みに投稿し続けた策士でもあったようです。具体的に各クラスタにどのようなアプローチをしていたのかを見ていきましょう。

イノベーター(単発ドラマ時代のファン、出演俳優ファン)

 過去作品のファンやキャストのファンは、ドラマへの興味を喚起しやすく、コアファンになってくれやすい非常に重要なクラスタです。これらの方々に確実に初回の放送を観てもらうためには、ドラマの放送前から放送日の直前まで、まるで年末年始のカウントダウンを待つ瞬間のように期待感を高めていく事が重要です。『おっさんずラブ』は、これを高めるために以下のようなSNS施策を行っていました。

・出演者のオフショット公開
Twitter、Instagramで、撮影中のオフショットを公開。宣材写真ではない、生感のある模様をSNSで公開する事で、ファンに楽しんでもらったり、過去作品との比較を楽しんでもらう。

・時節、モーメントの活用
4月1日(エイプリルフール)には、田中圭さんと林遣都さんが休憩中に喧嘩をし始める動画をTwitter、Instagramで公開。日常的なイベントにドラマが進出する事で、ファンの生活そのものに浸透する効果を得る。

 ドラマスタートまえから、おっさんずラブはファンを楽しませる仕掛けの投下に余念がない。Twitterでは効果的な「#エイプリルフール」の活用も本気で行っていました。

・ティザー期間のオフライン施策活用
田中圭さんと吉田鋼太郎さんのキス顔を使用したトレインラッピングや、ファンを対象とした第1話試写会イベントで放送開始直前の期待感を最骨頂に高める。

アーリーアダプター(ドラマ実況アカウント、BL好き、絵師)

 ドラマを楽しんでくれそうな見込みファンへのアプローチには、そのコンテンツのテーマと関連の高そうなクラスタの選定(ドラマ好き、BL好きなど)と、タッチポイントの選定が非常に重要です。『おっさんずラブ』の場合は、引き続きTwitter、InstagramなどのSNSが大きく寄与していました。

・ファンアートの推進
『おっさんずラブ』はドラマ開始直前から、イラストコミュニケーションサービスのpixiv上でイラスト募集企画を実施していた。ドラマ自体がファンアートを許容する姿勢をアピールする事によりTwitterやInstagramにも様々なファンアートが投稿され、ユーザー同士でファンアートを楽しむムーブメントが発生した。

・マルチチャネル展開
サブアカウント「武蔵の部屋」(@musashis_room)や、Instagram Storiesの活用など、おっさんずラブはSNSの活用手法も実に多彩であった。その盛り上がりは、サブアカウントのフォロワー数が、結果公式アカウント数を超えてしまうという事態まで引き起こす事に。

・字幕付、副音声などドラマの楽しみ方の拡張
Twitter上でのドラマそのもののバズに目を向けると、特に目立つのは字幕付きのドラマの1シーン画像。これは、名台詞(迷台詞?)が非常に多い『おっさんずラブ』の字幕付きの各ドラマシーンを、ドラマ実況垢ユーザーが面白がって撮影をし、Twitter上に投稿をした事で生まれた動きであった。ドラマからリアルタイムにネタを見つけ、瞬時に投稿をして楽しむ実況アカウントに目をつけられる事が、ドラマコンテンツの序盤での話題化にとって重要である。

アーリーマジョリティ(企業公式アカウント、文化人・著名人)

 ドラマも佳境に差し掛かる中で社会的なブームを起こした『おっさんずラブ』。そのブームの火付け役は社会的な影響力のあるインフルエンサーであった事は前述の通りですが、彼らの自発的な投稿を発生させるのは、ただ流行っているだけでは難しいです。彼らに投稿を促す理由づけにはどのようなものがあったのでしょうか?

・SNSを意識した、企業製品の小道具としての選定
たとえばシャープ公式(@SHARP_JP)やキングジム公式(@kingjim)は、ドラマの1シーンに各企業の製品が登場していた事で、ドラマについての投稿を行っていた。小道具などは細部へのこだわりと思われるかも知れないが、影響力の強いTwitterアカウントがドラマに触れざるを得ない状況を作り出した事が、人気をより多くのユーザーに広げた要因のひとつであった。

・ソーシャルイシューの活用
ここがドラマを社会現象にするための最も重要なポイント。『おっさんずラブ』が、一般化しつつあるLGBTの普及をより加速化させたように、トレンドとなる可能性を秘めた社会問題をコンテンツに盛り込んでいるか? が、コンテンツの盛り上がりをSNSから社会全体に拡張させるための最後のキーである。

次のページ
ファンは何者なのか? を徹底的に考える事が重要

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
ソーシャルメディア その進化と活用連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

金清 雄太(カネキヨ ユウタ)

65dB TOKYO
Head of 65dB TOKYO

2015年、TBWA\HAKUHODOに入社。統合的なデジタル施策の企画〜運用の経験を生かし、得意先のクリエイティブ、プロモーション立案のプロセスにデータドリブン思考を注入している。なかでも、ソーシャルモニタリングを活用した生活者インサイトを抽出する手法...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2019/03/22 07:00 https://markezine.jp/article/detail/30640

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング