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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』デジタルクリエイティブの作法

没入感×余白×わかりやすさ Z世代がハマるコンテンツとは

求められる没入感と余白、同じ目線

――「カロリーを使わせない」とは、「わかりやすさ」ということでしょうか。

 そうですね。たとえば、YouTubeであれば、サムネイルとタイトルで内容とオチをイメージさせることが重要です。SNS上でのコミュニケーションであれば、没入感、余白、サムストップアクション、再生前の満足担保が揃えば、スベる可能性は格段に低くなるはずです。

――没入感と余白をコンテンツに持たせるために、必要なことはなんだと思いますか。

 没入感に関しては、自然発生的で当事者意識を持たせる要素が必要だと考えています。作り物(やらせ)感の強いものだと、彼らはきっと既視感と拒否感が強い。一方余白は、ユーザー完結型の内容にすると作りやすいです。コンテンツに対し、ユーザーの解釈を加えられる隙間を作り、情報を受け取った人の手でコンテンツを何通りにも変化させられる余白が重要だと思います。

 Z世代に人気の恋愛リアリティーショーは、没入感と余白を押さえた代表的なコンテンツです。登場人物の誰かに感情移入して、その人を通して誰かと恋愛しているような感覚で楽しむことができるからです。その他にも、「私だったら、彼を選ぶのに!」といった解釈が投稿できる、さらにその解釈から新たな意見を語れるなど、Z世代が好む要素が満載のコンテンツだと思います。

 また、受け手と同じ目線に立つことも大事です。「このコンテンツ、すごいでしょう?」と主張するとスルーされますし、目線を下げ過ぎても引かれてしまうので、そのさじ加減を調整することが求められていると思います。

――コンテンツを受け取る側と同じ目線に立つことは、非常に難しいですよね。池田さんはどのようなことを意識していますか?

 カルチャー目線でコンテンツを開発するようにしています。カルチャー目線とは、相手のことやその世代のカルチャーの立場に立つことを指しています。人は環境に支配されている部分が多いので、たとえば、Z世代の女性をターゲットとしたとき、彼女たちはどのような生活を送り、何を見てきて、どんな流行の中で育ったのか歴史を紐解きます。それも、経済や政治、環境、風俗まで理解することが大切だと思います。その上で、一歩先の流行を先読みしたコンテンツを設計するようにしています。

広告にメッセージとおもしろさを

――カルチャーを読み解くために、池田さんが習慣にしていることはありますか。

 各種SNSプラットフォーム、配信サイト、映画、TV番組、漫画、小説、政治経済の歴史やニュースをなるべく多く1日に最低5~6時間はインプットするようにしています。映画はどんなに忙しくても必ず1日1本は観ています(笑)。

――インプットに多くの時間を割いているのですね。そのときはどういった視点でコンテンツを見ているのですか。

 たとえばTwitterを見る場合は、ツイートの内容はもちろん、何時につぶやかれたのかなども見ます。要素分解することで、伸びるツイートの傾向が把握できます。よく文章と画像と時間を見てリツイート数を予測しているのですが、最近ではその精度も上がっています(笑)。

 また、ヒットしたコンテンツに関しては特に細かく要素分解しています。昔のバラエティ番組にあった、上からタライが落ちてくるおもしろさは、世代が変わっても通じます。そういった要素を今風にアレンジして、制作する動画などのコンテンツに盛り込むようにします。今あるほとんどのコンテンツは紐解くとコア要素のトレースのような気もします。

――コンテンツと真摯に向き合ってきたんですね。2018年11月にTBWA HAKUHODOに入社したとのことですが、その理由を教えてください。

 企業が伝えたいメッセージが届くコンテンツを作れるようになりたいと思ったからですね。これまでの私のキャリアは、芸能コンテンツの制作や、タレントやキャラクターマネジメント、テレビ番組やミュージックビデオなどのエンターテインメント領域が中心でした。その中で各種SNSやYouTubeで話題を生むコンテンツ作りに携わってきました。

 しかし、あるときからTwitterで話題になった、動画再生回数が何億回突破したなどの成果が出て嬉しい反面、「それで、どうなの?」と思うようになってしまいました。コンテンツの数字を出せることは証明されたが、その先で何か起きたのだろうかと。何が足りないのかを考えた結果、たどり着いた答えは「今作っているコンテンツにはメッセージがない」でした。そして、メッセージを載せたコンテンツを作りたいと思った時、一番に思いついたのが広告でした。

 広告にはメッセージが盛り込まれている一方で、無視されたり嫌われたりすることもあります。その状況下で、おもしろくてビジネスインパクトもあって、生活者にメッセージも届く広告を作れるようになったら、自分自身がクリエイターとしてレベルアップできると思ったのです。その姿を目指して、広告会社のTBWA HAKUHODOへ入社しました。

広告を嫌う世代とどう向き合うか?

――話題になった先の成果も出せるようになったら非常に心強いですね。しかしながら、なぜコンテンツが広告の枠組みになると、広がりづらくなってしまうのでしょうか。

 制約が多いからだと考えています。広告主の持つブランドには何十年もの歴史があります。私個人が匿名でやる分にはおもしろければそれでOKですが、企業の広告で誤ったコンテンツを作ると経営にも関わります。何万人の従業員とその家族の生活にダイレクトに関わります。余白のあるコンテンツを作りたくても、間違った解釈で広まってしまうリスクもあるため、余白を残すのも大変慎重になります。これまで制作してきた環境と、本当に違うなと思います。入社して4ヵ月が経ちますが、毎日がチャレンジの連続です。

 また、前職でインフルエンサーマーケティングにも携わっていたこともありますが、生活者は広告に対して非常にシビアな反応をする印象があります。インフルエンサーのファンはPR投稿などに敏感で、それがわかると「この投稿は広告か」と批判的な目で見てくるのです。そのため、広告案件を受けることでインフルエンサーとしての自身のブランド価値を弱めてしまうのではないかと気にする人もいました。

 本来、コンテンツも広告も生活の中で接触するもので、分けられないものですが、生活者は完全に「これは広告だ」と冷静になってしまう。テレビを見ていても、テレビCMが始まった途端にスマホを見ますよね。

――今はまさに広告ならではの難しさに直面しているのですね。最後に、これから取り組みたいことについて教えてください。

 現在はクライアント企業のテレビCMの企画などに関わっていますが、とにかく今の私にできることは、多くのアイデアを持っていくこと。まだ採用されることが少なくつらいですが、仲間として迎え入れてくれたTBWA HAKUHODOに早く恩返しがしたいです。試行錯誤の毎日ですが、忌憚のない意見をいただける上に、私の言葉にも耳を傾けてくれるチームで仕事をしています。このような環境があることは、恵まれているなと思います。オフィスもすごくおしゃれです。

 広告会社に入社した最大の目的は、商品や企業のメッセージを生活者に受け入れられるよう落とし込み、その上でおもしろいコンテンツを作る能力を身につけること。広告主から「ぜひ池田にお願いしたい」と指名をいただけるよう、日々精進したいと思います。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/03/25 15:30 https://markezine.jp/article/detail/30641

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