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データで再構築するテレビマーケティング

CMのクリエイティブをデータで科学する/アテンションを集めやすいCMのポイントは?


注視を集めやすいCMのカギは「意外性」「音」「商品特性の訴求」

 多くの属性でランキング入りしているのが、『サラテクト「愛ちゃん語る」篇 30秒』『WOWOW「合唱」篇 30秒』です。サラテクトは元卓球選手・福原愛さんが夫の江宏傑さんと初共演したというキャスティングの新鮮さに注目した視聴者が多かったのではないでしょうか。一方、WOWOWのCMは、それまで繰り返し同社が流してきた「フフフフ~ンに入ろかな♪」というCMソングを大勢の子どもたちが合唱で歌うという、これまでのCMシリーズとのギャップや、たくさんの声が耳に入ってくる”音”の驚きが、注視を誘う結果になったものと思われます。

 このように、注視を集めやすいCMとは、思わず画面に目を向けてしまうビジュアルの意外性やキャスティング、音(BGM)、商品特性の訴求などが鍵となっています。また、毎秒レベルのAI値の上がり下がりをグラフ化することで、ビジュアル、キャスティング、音といったCMのどの要素が、視聴者の注視に影響するのかを、秒単位で明らかにできるようになってきました。

 すると、属性別のAI値が高くなりやすいクリエイティブの特徴も見えてきました。たとえばF1層の女性にはパステル調でポップなビジュアルと、飽きさせないテンポの良さが効果的です。一方、F2層の女性には、Slice Of Life(日常のワンシーン)や味覚・機能性への訴求が効果的な傾向にあります。また、男性には、歌と踊りがセットになったわかりやすいインパクトと、シリーズものによってパターン化されたBGM、CMソングなどの音が有効です。

自社のKPIとリアルな視聴実態を組み合わせる

 とはいえ、こうした傾向はあくまでも一般論です。すべてのCMをこの特徴に基づいて制作する必要はありませんし、そうすべきでもありません。重要なのは、クリエイティブについてもデータに基づいて仮説を立て、効果検証する意識を持つことです。

 実際に、データの分析結果を、クリエイティブ制作に生かしている広告主も出てきています。我々が見てきた事例では、いくつもの広告主が自社で設定したKPIの数値と、AI値を組み合わせて分析することで、クリエイティブの新たなPDCAの回し方を見出しています。そしてその結果をクリエイターにフィードバックして、広告効果を上げた事例も増えています。

 たとえばある自動車メーカーでは、事前視聴に基づいたサーベイ調査と実際のAI値について相関関係を出し、目指すべきCMの姿を模索しています。どうしてもサーベイ調査では強制視聴が前提となってしまいますが、AI値は自然な視聴態勢を計測したデータです。そのギャップを見ることで、CMのクリエイティブで伝わる部分・伝わら部分をデータによって見出そうとするアプローチです。

 事前調査では好意的な反応が多かったCMでも、AI値が低いこともありますし、その逆もあります。先に挙げた様々な要素をすべて盛り込めば必ず視聴者に見てもらえるわけではありません。むしろ、要素を盛り込みすぎたCMは、AI値が下がる傾向にあることもわかってきています。また、AI値の高いCMがすなわち伝わるCMであるというわけでもありません。たとえば、ビジュアルのインパクトは少なくても、ナレーションや強いコピーを”音”で聞かせることにより、AI値は低くても効果的なCMを制作することは可能です。

 強制視聴の環境下においては伝わるメッセージやクリエイティブも、「見るも見ないも、視聴者の自由」という日常生活の中でどう見られ、どう伝わっているのかはまだまだ検証の余地があるでしょう。広告主はクリエイティブについても、データを活用しながら総合的に検証していくべきです。

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仮説検証のマインドを持ち、データに振り回されない

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この記事の著者

郡谷 康士(グンヤ ヤスシ)

TVISION INSIGHTS株式会社 共同創業者/代表取締役社長
東京大学法学部卒。マッキンゼー・アンド・カンパニーにて、事業戦略・マーケティング戦略案件を数多く担当。リクルート中国の戦略担当を経て、上海にてデジタル広告代理店游仁堂(Yoren)創業。2015年よりTVISION INSIGHTSを創業し、代表取締役社長...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/03/26 21:48 https://markezine.jp/article/detail/30645

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