3つの共通認識を踏まえて顧客データを統合
WOWOWのコールセンターでは、デジタルシフトへの対応に先駆け、まず次の3つの事実を共通認識とした。その上で、顧客に最高のサービスを提供するためにはどう変われば良いのか、考え始めることになった。
(1)チャネルの増加
→お客様は、シチュエーションに合わせてチャネルを選択している。
(2)入電量の減少≠WOWOWへの関心低下
→お客様は、他のチャネルでWOWOWに触れている可能性がある。
(3)通話の時短傾向
→電話を早く終わらせたいお客様も多い。引き延ばすのは逆効果。
検討を進める中で、コールセンターでの解約阻止の際に「顧客のWeb行動情報」を活用すると、より良い提案ができるのではないかと考えるようになる。
また、メールを中心とする施策を展開していたデジタルマーケティングのチームも、思うような成果を挙げられずに苦しんでいた。
そこで、あらゆる接点において集めた顧客情報を活用すべく、マーケティング組織を横断するプライベートDMPを構築することに。顧客データを一元化し、1つのIDに紐付く情報を可視化できるように整備した。コールセンターにおいては、電話応対を行うときにあらゆる顧客の情報にアクセスし、その内容を会話に反映できるレベルを理想に掲げた。

「デジタルとアナログが統合することによって、様々なデータを確認でき、やっとお客様との接点の統合が実現しました。今まで、我々コールセンター側の人間は、水際の解約抑止しか手段がなかったのですが、複合チャネルによる事前アプローチによって、より早い段階での解約抑止が実現できるようになったのです」(杉本氏)
アナログの強みは「なぜ?」に深く迫れること
WOWOWでは、デジタルマーケティングが高度化している現在でも、あえて電話による顧客とのコミュニケーションを重視している。杉本氏は、電話で顧客の「生の声」に触れ続ける2つの理由を語った。
1つ目は、「なぜそのコンテンツを視聴したのか」という理由を、より高い精度で把握できることだ。デジタルから得られる情報で、顧客がコンテンツを視聴した背景を知ることは難しい。しかし電話でのヒアリングを行うと、「そのコンテンツの大ファンだから観た」「偶然見つけたので視聴した」といった個々の事情が浮かび上がってくる。
杉本氏は、将来的にはこうした領域をデジタルが担う可能性はあるとしながらも、現時点では電話でのヒアリングが勝っていると話した。
デジタルマーケティングによる情報で「顧客のボリューム、行動結果」を把握し、コールセンターで「行動の背景」を探っていく。これにより、WOWOWは顧客理解を進められるようになった。
しかし杉本氏は、顧客に一歩進んだ「ファン」になってもらうには、これらの接点だけでは不十分だと述べ、「生の声」を集める2つ目の理由として「WOWOWファンボイス」の取り組みを紹介した。