重要なのは段階ごとのKPI設計
読んでほしいコンテンツの選定後に行ったのが、それぞれのコンテンツのページビューをコンバージョン(中間・最終)とする設定である。ここでは、価値のある読み方がされたかどうかを判断するため、SATORI社内の関係者と議論し、「30秒以上滞在し、かつ半分以上スクロール」したことを条件に有効ページビューとみなすことにした。
有効ページビューの獲得単価をKPIにするには、1件の成約にかかった費用から逆算した。SATORIの場合はMAツールベンダーでもあるため、社内に広告接触、コンテンツ閲覧、商談など多岐にわたるデータがある。そこで受注単価と各段階の比率をもとに逆算し、各段階の目標CPAを割り出すことにしたのだ。
それぞれの段階における限界CPAをKPIとして運用しながら、現場の担当者と達成できているかを段階的に見ていった結果、設計した通りのCPAでリードが獲得できた上に、最適化を行うことにも成功した。
コンテンツ閲覧のページビューだけでなく、「SATORI」のプッシュ通知のオプトインをコンバージョンとする設定も行った。オプトインが増えれば、2回目以降の広告接触がプッシュ通知に代わり、ROIを改善する効果が確認できた。
具体的にはそれぞれに次のような設定を行った。
そのうち客:コンバージョンした顧客と類似するオーディエンスへの広告配信
もうすぐ客:リターゲティング広告とポップアップ・プッシュ通知を実施
今すぐ客:キラーコンテンツに誘導URLを置き、リターゲティング広告とポップアップ・プッシュ通知を実施
運用型広告で得られた手応え
定量的にどんな成果を得られたのだろうか。「SATORI」が間に入ることで、中間の広告へのクリック回数が2つ減り、ポップアップの閲覧やプッシュ通知に代わったことがわかる。
鈴木氏は、「結論を話すと、広告予算の約20%を低減することができた。さらに従来予算をリード獲得効率の高い施策に再配分できる」と述べた。これは同じ広告予算でコンバージョン数が1.2倍になることを意味する。
今後はこの成果をスケールさせられるかを検証したいと抱負を述べた。たとえば、今回よりも予算を増やした場合にも同様の成果が得られるか、あるいは今回試した広告とプッシュ通知の代わりに営業からのメールを読んだかなどの別の施策にすると、どう変わるかを検証することが考えられる。
セッションの終盤、参加者より「同じ仕組みを運用するための予算がどのぐらい必要か」という質問が出た。これに対し鈴木氏は、コンテンツを継続的に作成していることを前提とし、最初は月500万円が目安になると答える。
注意点は成果が出るまでには一定の時間がかかることだ。SATORIの場合、商材特性から最終コンバージョンに至るまでに3ヵ月を要した。商材によっては、足が長いものもあるため、最初に接点を持ってから購買に至るまでの時間と同じぐらいの我慢は必要になるかもしれないと植山氏は指摘する。
リード獲得に運用型広告を使う仕組み作りに着手する前は、SATORI社内での議論では賛成の声ばかりではなかったという。「『予算が1,000万円あるならば、展示会に出展したほうがいいのではないか』という意見も出たが、BtoBセールスを変革するというビジョンに従いやらなければならないと判断した」と植山氏は振り返り、毎月の予算をさらに引き上げた検証に意欲を示し、講演を終えた。