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西口一希と考えるマーケティング視点の経営

「マスとデジタルの区別は、もう意味がない」スマニュー西口×広告クリエイティブディレクター小霜対談

CPAが安い顧客層から狙っていく

西口:そのお考えは、小霜さんの本やセミナーでも一貫していますよね。僕も同感なんですが、それらは単なる手法なのに、なぜか部門も違うし、対立する雰囲気すらある。

小霜:そうそう。テレビマーケティング部と新聞マーケティング部がある、なんて聞いたことないのに、なぜか“デジタルマーケティング部”は存在するという。

 ナショナルクライアントなどの大手企業で組織が細分化するのは、ある程度は仕方がないかもしれませんが、テレビや新聞などと並列にデジタルがあるのに、そこを分断してしまうとすごく非効率なんですよね。まるっとひとつでいいと思う。

西口:確かに。マスとデジタルの部門が分断して、目標数値もばらばらだと、統合マーケティングを実現するのはすごく難しいと思います。

小霜:僕が経営層とつながってマーケティング全体を俯瞰すると、その部門ごとの目標とかがどうでもいいという話になる。もちろん、現場一人ひとりのスタッフの立場も実際には無視できませんが、最終的に、ビジネスゴールである売上を上げるのが経営層の見据えることなので。

西口:そのとおりですね。小霜さんが統括してメディアプランを構築するとき、どういう軸で組み立てていくんですか?

小霜:CPAです。顧客一人を獲得するとき、いちばん安い層から取ってこようという、とてもシンプルな話です。でも、ターゲットを明確にしていないことが、すごく多いですよね。

ターゲティングなきマーケティングの無駄

西口:そうなんですよね。先日上梓した本にも、ターゲット顧客層を分けてマーケティングすることの意味を書いたんですが、逆にそれをせずしてマーケティングをするのは無理なんじゃないかなって。

小霜:本当にそうですね。たとえば、新しい育毛剤Aがあるとして、いちばんCPAが安い層は「Aを知っていて、欲しいと思っている」顕在層です。その人たちを、サイト訪問やリスティング広告の反応から検出して、アプローチできる。次に安いのは、「Aを知らないが育毛剤を探している」人。これもネット上の行動でわかります。

 逆にいちばんCPAが高いのは、髪の毛がふさふさの人ですよね。テレビCMを打つとこういう人たちも見るから、そのコストは無駄になってしまいます。ナショナルクライアントはともかくスタートアップ系などは、CPAが安いところから獲得していくと、事業は理想的な成長曲線を描けると思いますし、ターゲティングもそれによって変えていくということです。

西口:それが実践できると、すごく効率化すると思います。顧客を分類せず“マス”と捉えていっぺんにマーケティングする発想を、僕は「マス思考」と呼んでいるんですが、デジタルもマス思考で使ってしまうと、デジタルの特性をまったく生かせない。

小霜:そうですね。逆に、マス媒体をOne to Oneマーケティング的に捉えて、効果的に使うこともできます。たとえば以前、ドコモアニメストアというサービスのCMを制作したんですが、これをTOKYO MXのアニメ番組に出稿しました。

 テレビを使っていますけど、明らかにアニメ好きな人をターゲティングしているので、いわゆる大衆というマスではなくOne to Oneに近いです。興味が顕在化している層を狙えるので、CPAが安く済む。

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マス思考からOne to Oneマーケティングへ

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この記事の著者

西口 一希(ニシグチ カズキ)

大阪大学経済学部卒業、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)マーケティング本部に入社。ブランドマネージャー、マーケティングディレクターを歴任。ロート製薬 執行役員マーケティング本部長として「肌ラボ」「Obagi」「メラノCC」「デオウ」「ロート目薬」などの60以上のブランドを統括。ロクシタンジャポン代表...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/04/23 14:00 https://markezine.jp/article/detail/30854

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