消費者に不正広告の認識が広まり、広告主側の意識も是正され始めた
MZ:先ほど漫画村の話題が出ましたが、昨年の事件を契機に、どんな変化があったとお考えでしょうか。

高田:漫画村が大きく取り沙汰されたことで、不正広告に関する問題が一般消費者の方にも認識されたのは大きな変化でした。
実際、漫画村の事件以降、一般消費者の方から広告主への「通報」が増えています。広告主のお客様相談室に「あなたの会社の広告が、こんな変なWebサイトに出ていますが、大丈夫ですか?」というような問い合わせが、急増しているのです。そのような声を受け、アドベリフィケーション対策を見直す広告主も徐々に増えています。消費者の変化が、広告主側の意識改革を後押ししているように思います。
高頭:漫画村のような著作権侵害にあたる、法規制対象になるレイヤーは当然除外していくべきです。私たちはそこからさらに踏み込んで、事件事故のコンテンツには広告配信しないようにするなど、広告主に配慮した広告配信を実施しています。
高田:そもそも、広告主ごとにブランドセーフティの基準は様々です。極端な例ですが、アダルトコンテンツを提供する広告主であれば、アダルトサイトに自社の広告が表示されても問題ないですよね。
つまり、すべての企業にとって画一的な「ホワイトリスト(広告が掲載されても問題ないWebサイト群)」は存在しません。本来であれば一社一社が自社用のホワイトリストを構築すべきです。電通デジタルではベースとなるリストを作っていて、さらにそこから広告主ごとにカスタマイズしたホワイトリストを提供しています。
アドベリフィケーション対策に取り組む際のチェックポイント
MZ:実際、アドベリフィケーション対策を実施するにあたり、広告主は何から始めればいいのでしょうか?

高頭:キャンペーンの規模や内容にもよるかとは思いますが、代表的なものとしては次の3つのポイントが挙げられます。
1、正しく測定できる環境が整備されているか
2、無効なトラフィックに対する取り扱いを定義できているか
3、オーディエンス拡張について透明性を要求できているか
出典:Association of National Advertisers(ANA)とWhiteops社によるアドフラウドチェックシート「Pre-Campaign Checklist」
高頭:まずは、そもそも正しい手法で施策を計測できる環境にあるかどうかを確認しましょう。アドベリフィケーションツールベンダーや代理店の監査など、第三者によるチェックが入っているプラットフォームかどうかをしっかり見るべきです。
そして、GIVT(General acted Invalid Traffic)と呼ばれるGoogle botのような悪意のないbotと、SIVT(Sophisticated acted Invalid Traffic)と呼ばれる不正を目的とした悪意のあるbotの区別をはじめ、広告に無効なトラフィックに対する扱いが、プラットフォーム側で明確になっているかどうかは必ず確認しましょう。
高田:またデジタルマーケティングにおいて一般的になってきたオーディエンス拡張ですが、便利な一方でbotによるリスクが高まるケースもあります。機械的に拡張せず、しっかり監査の目を光らせているかもチェックするべきです。リスクを削減するために、オーディエンス拡張をあえて利用しない選択肢があることも理解しておくと良いですね。合わせてJIAAが発表した「『ブランドセーフティ』確保に関するJIAAステートメント」も参考になります。
オーディエンス拡張:Webサイトに訪れたユーザーと似たような行動をしていて、まだWebサイトに訪れていないユーザーをネットワークの中から探し出し、ターゲティングして広告配信する手法