小さなコミュニティが大きなカギに マイクロインフルエンサーの存在
インフルエンサーマーケティングを語る前に、現代のコミュニティに対する理解を深める必要があります。昨今の価値観が多様化している世界では、今や多数派イコール力を持っている、という単純なパワーバランスの時代ではなくなりました。
SNSにより、実際に会ったことがない人々も仲間と呼べるようになり、ある特定の共通項の中でコミュニティを作りやすくなりました。これまで少数派の趣味嗜好を持った人々もその仲間と集まり、力を持ち、その仲間と強固なコミュニティを形成し維持することが容易になったのです。この消費者同士が作り出す小さなコミュニティの集合体が、インフルエンサーマーケティングにおいても大きな力となり、カギとなるのです。
インフルエンサーというと、SNS上で多くのフォロワーを抱えるような著名人などをイメージする方も多いのではないでしょうか。この層のインフルエンサーはリーチを一気に取ることが可能で、その効果は言うまでもなく絶大です。
しかし、このマスコミュニケーションだけでは消費者行動を促すのには十分とは言えません。リーチだけではなく、深くエンゲージしていくアプローチも必要となります。そこで注目されているのが、マイクロインフルエンサーとの協業です。マイクロインフルエンサーとは、先述のように特定のコミュニティを形成していて、影響力を持っている方々を指します(図表1)。

マイクロインフルエンサーの発信へのいいね! やコメントは、共感を纏ったエンゲージメントであり、日頃から自然でインタラクティブなコミュニケーションが生まれやすくなっています。なぜなら、消費者にとても近いこと、そして近しい趣味嗜好を持つフォロワーで形成されている傾向にあるからです。この温かいコミュニティを持っているマイクロインフルエンサーと協業することにより、伝えたい人々に深くブランドメッセージを伝えられることが期待できます(図表2)。

明暗を分けるインフルエンサーとの「相性」
リーチだけではなくエンゲージメントも重要とお伝えしましたが、そのためにも、インフルエンサーを単なるメディアとして捉えてはいけません。KPIを設定した後は数字だけ追いかけてしまうことが多く、インフルエンサーが「ヒト」であることを忘れがちです。お金を支払うのだから対価に見合うリーチを、そして指標上のエンゲージメントを取れたかという点に目が行きがちです。しかしキャンペーンがうまくいかない原因の一つとして、インフルエンサーやそのコミュニティ自体がブランドにマッチしていないことが挙げられます。
これを回避するために、まずはフォロワーとその先の消費者を意識します。そしてブランドやサービスと親和性があるコミュニティとマイクロインフルエンサーを見つけ出す必要があります。具体的には、そのインフルエンサーを理解するために、過去の投稿などから趣味嗜好や価値観を分析し、ブランドと照らし合わせる必要があります。
たとえば、スポーツブランドであれば「ライフスタイル系のインフルエンサー」と大きく括るのではなく、「運動の習慣があり、アイテムにもこだわるインフルエンサー」と協業することが望ましいでしょう。フォロワーが多くてもスポーツをまったくしない方に、無理に投稿をしてもらってもエンゲージは期待できませんし、そのインフルエンサーにとってもフォロワーを裏切ることとなり、誰も利を得ません。
共感を得るコンテンツをインフルエンサーと共創する
次にインフルエンサーがブランドとマッチしていても、発信するコンテンツがブランドの意図と掛け離れていることも少なくありません。それはインフルエンサーに対して、事前にブランドやキャンペーンの目的を伝えられていなかったり、インフルエンサーの起用だけをして、手放しで任せてしまったりしていることが要因として考えられます。
ブランドの意図を汲み取った上で、コンテンツを作成してもらい、実際の投稿前にブランド担当者による確認を行い、意識を合わせることも忘れてはいけません。この承認フローのステップを踏むことで、ブランドセーフティを担保することが可能となり、ここで満を持してブランドメッセージの代弁を託すことができるのです。
先ほどインフルエンサーに対する理解が必要だと述べましたが、インフルエンサー側も同様に、ブランドやキャンペーンの深い理解が必要となります。この両方がなければ、共感を得るコンテンツは作れません。
また、コンテンツの二次利用については、著作権や肖像権など後々トラブルに発展することも少なくありません。同様に、コンテンツに写っているアイテムや建物など、中には個人利用では問題がなくても、商用利用する場合に問題となるケースがあります。いつでも必要な際に二次利用が可能となるよう、ライツチェックをきちんと行い安心安全なコンテンツにする必要があります。
しかし実際のオペレーションを考えたとき、ブランド担当者がブランドにマッチするインフルエンサーを見つけ出し、コミュニケーションをとり、交渉から契約、キャンペーン管理、二次利用におけるライツチェックまで行うことは現実的とは言えません。同じ想いで併走できるこの領域のプロフェッショナルとタッグを組み、テクノロジーを駆使しながら効率的かつ効果的な運用を行うことが理想的です。