資料作成時間と労働生産性の関係
冒頭で述べましたが、皆さんも是非一度、どれだけ資料作成に時間を費やしているのか確認してみてください。仮に、毎日1時間、資料作成を行っている場合、40年間で10,000時間を資料作成にかけている計算となります。先進国の中で、最も労働生産性が低いと言われる日本。加えて、直近では資料作成による時間外労働の問題が社会問題にも発展しています。
にもかかわらず、プレゼンテーションの資料作成のプロセス自体にメスを入れたアカデミックな研究や、この課題を解決するソリューションはこれまで皆無でした。本連載では、プレゼン資料作成プロセスの解明をはじめ、効率的なプレゼン資料作成の形式知化について、様々な観点から伝えていきます。
不可解な日本企業のプレゼン資料
ところで、プレゼンテーション資料とはそもそも何のために、存在しているのでしょうか。ルーツは、「相手にモノ・コトを伝える」古代文明の壁画に遡ると言われています。現代におけるプレゼン資料の目的は「相手にわかりやすく伝える」ことです。
しかし、日本企業の“プレゼン資料”の実態はどうでしょうか。本当に“わかりやすく”伝わる資料が作られていると言えるでしょうか。当社では、ベンチャー企業から大企業まで、様々な企業のプレゼン資料の診断をしてきましたが、「当社のソリューションは内容が複雑すぎて、情報をふんだんに盛りこまないと説明できない」「担当役員が細かく情報を記載しろというので、うちの資料はどうしても情報量が多くてわかりにくくなってしまう」という多くの声を聞いてきました。
究極のプレゼン資料は超シンプル
「自社サービス・ソリューションの複雑性」「上層部の思想」によってプレゼン資料がわかりにくくなってしまうと思いがちですが、実はどちらも理由ではありません。たとえば日本企業よりも、GoogleやAppleなどのコングロマリット企業のほうがサービスやソリューションの幅は複雑でしょう。しかしながら、グローバルで時価総額を伸ばしている巨大企業である彼らの資料は、非常にシンプルです。また今は亡きスティーブ・ジョブズ氏は、思想家であると同時に徹底的に細部にこだわる有名な経営者の一人でしたが、彼のプレゼン資料は至ってシンプルでわかりやすい構成でした。
