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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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私のキャリア

次世代PRのために、「次の当たり前」を作りたい

PRの本質に目を向けたサービス「P-NEWS」

――現職のFIREBUGでは、新規事業の事業責任者をされています。大きなキャリアチェンジですね。

 ジーユーでは、消費者調査から実売データを組み合わせたマーケティング戦略の軸となる新しいプロジェクトを自ら企画し、実行まで行いました。パブリシティで話題を作り、様々なマーケティング施策でお客様を増やす仕組みを考案するなど、PRとマーケティングの全体設計に関わることができました。しかし私の成功体験は、スタートアップから大きく成長していく過程のPR経験です。いつしか、この経験を企業PRの立場ではなく、もっと多くの人に向けて役立てたいと考えるようになっていました。そこで考えたのが、メディアのニーズを的確に満たすPR情報のマッチングサービスです。実は、企業とメディアの双方に、PRの課題があります。たとえば企業の場合、メディアとのリレーション作りは簡単なことではありません。またプレスリリースは本来、ラブレターのように届けたいメディアに向けて書くべきですが、コミュニケーションが属人的になるため、メディアごとに最適化されたプレスリリースを送ることは現実的に難しいです。

 一方のメディアにも、1日に200〜300通のプレスリリースが機械的に届き、本当に欲しい情報を見つけにくい悩みがあります。インターネットの時代、情報収集は簡単になったはずでしたが、逆に自分が欲しい情報を選ぶことや見つけることが難しくなっていたのです。ならば、これらの課題をテクノロジーで解決し、量ではなく、質の高い情報を伝え合う、企業とメディアのマッチングにニーズがあるのではないかと考えました。

 FIREBUGとは、経営陣とご縁があり、私の構想に興味を持ってくれ、新規事業「P-NEWS」を一緒に取り組むことになりました。またFIREBUGは、多くのスタートアップ企業を中心にPRやマーケティング支援を行っています。初めてPR業務に関わる方にも、数あるニュースから選ばれるために、P-NEWSを本質的なPRのあり方を学べる場として、活用いただけたらと構想を広げています。

「P-NEWS」のアプリ画面イメージ
「P-NEWS」のアプリ画面イメージ

データでPR活動を可視化する

――スタートアップから大手企業まで、幅広いPR経験をお持ちです。お仕事では、どんなことに心がけていますか。

 データドリブンなPRです。PRの効果指標は抽象的な内容になりがちです。数値目標は、広告費換算値や掲載数で計ることが多く、「本当にこの数値がPRの本質なのか、他に計れる指標はないのか」と考えていました。「テレビで紹介された」の結果を1つ挙げても、その裏側には、メディアとリレーションを作り、企業として伝えたいメッセージを届けるという人間の行動があります。これを可視化し、本質的な評価をしなければなりません。この思いを形にしたのが、クックパッド時代に開発したPR効果指標です。PRとして伝えたいこと、事業の何に貢献するかを5項目程度設定し、それに紐付く小項目を10項目ほど作成して係数化しました。小項目には、掲載面の場所・記事の量はもちろん、テレビであれば露出時間まで細かく定め、自分たちの事業に対する貢献度をポイントで表せるように設計しました。結果、広告費換算値や露出件数だけではなく、事業への貢献度でもポイントを上げられるように、PR活動を可視化することができました。

 また、指標が広報部と経営層との共通言語になったこともポイントでした。経営方針に合わせて項目や係数を変更することもできます。メンバーの目標管理にも導入され、指標がチームに浸透していったことは嬉しかったです。「自分が努力したこと、もう少し頑張れるポイントが明確となり、納得感のある効果指標です」とフィードバックをもらったときは、メンバーの役に立てて良かったと思いました。

――まさに、理想としていた「仕組み化でより多くの人の役に立つ」が実現できたのですね。またクックパッドは、テレビ番組や雑誌など多くのメディアで目にすることが当たり前のブランドになりました。

 私がPR専任となった当初、経営陣からは「とにかくクックパッドをミーハーに」と言われていました。これは、ステキな料理が集まり、料理好きな方だけが知るクックパッドではなく、毎日の料理に寄り添うマスブランドのサービスとしてのブランディングや事業に貢献するPRを意味します。それまでのコーポレート広報は、採用PRを目的としたテクノロジーカンパニーのメッセージに注力していましたから、PRに求められる要素が変わった瞬間でした。「時短」「コスパ」など、切り口や要素をマス向けに変えて、アプローチするメディアも新しく増やしていきました。

 そこで着目したのが、クックパッドが持つビッグデータです。レシピそのものだけではなく、レシピに関するデータを発信することで、食に関する課題解決ができることを伝えていきました。先ほどお話しした「たべみる」では、クックパッド内の検索データをもとにしたSI(サーチインデックスの略で1,000回あたりの検索頻度)値で、食のトレンドを知ることができます。たとえば、クックパッドで1番検索されるワードは「簡単」で、SI値は60から70にもなります。私は、データを見ては世の中にとっておもしろい傾向を探し出し、分析して、PRコンテンツを作ってきました。前年比で何倍にも検索が伸びている食材やメニュー、検索数の多いメニューのデータをもとに、流通の売り場提案にもつなげていました。

 各メディアに対しても、春であればSI値の高い「お弁当」と、一緒に検索される、すなわちどんなお弁当を作りたいかがわかる第2検索ワードと検索が多い「作り置き」「おにぎらず」を紹介するお弁当特集や、ブームになった「食べるラー油」と同じ検索波形の調味料を見つけては「ネクストトレンド調味料」として、企画提案を繰り返していました。またデータ提供だけでなく、日頃から撮影用にクックパッドの社内キッチンでの調理サポートやクックパッドユーザー様を紹介するなどのご協力をすることで、信頼関係を重ねていきました。このような活動が大きく実を結んだのが、視聴率が高い地上波昼帯番組のレギュラーパブリシティの獲得です。2年間総合プロデューサーと企画を担当させていただきました。番組内容はクックパッドの人気ユーザーが登場する構成で、会社を支えてくださるユーザーが活躍する場を作れたことはユーザーにも喜んでいただけて嬉しかったです。PRは、メディア・ユーザー・企業の三方良しが大切です。該当の番組は多くのクックパッドファンに見ていただけただけでなく、クックパッド社内でも評価は上々。リアルタイムに放送中のアクセスログを見ながら、その影響度の高さを感じたり、尽力いただいた総合プロデューサーからも「ターゲットの視聴率や番組内容の評判が良い」と喜んでいただきました。クックパッドでは数多くのPR活動を行ってきましたが、特に印象に残り、周りの反応が嬉しかった取り組みです。

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「次の当たり前」を作りたい

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

市川 明徳(編集部)(イチカワ アキノリ)

MarkeZine編集部 副編集長
大学卒業後、編集プロダクションに入社。漫画を活用した広告・書籍のクリエイティブ統括、シナリオライティングにあたり、漫画技術書のベスト&ロングセラーを多数手がける。2015年、翔泳社に入社。MarkeZine編集部に所属。漫画記事や独自取材記事など幅広いアウトプットを行っている。
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※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/05/24 14:15 https://markezine.jp/article/detail/31045

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