※本記事は、2019年5月25日刊行の定期誌『MarkeZine』41号に掲載したものです。
このところ国内外様々なメディアでは「中国の景気減速」という文字が目立つようになっている。ブルームバーグのコラムニスト、NishaGopalan氏によると、2018年12月の中国小売売上高は前年同期比で8.2%の上昇にとどまり、この15年で最低を記録したという。この他自動車や情報通信機器などでも消費者市場の冷え込みを示唆するデータが増えている。
またフォーブスによると、中国国内配車サービス最大手Didiは、同社全体の15%に及ぶ2,000名の人員削減に乗り出し、また社員向けに無料で提供してきた軽食サービスやヨガ講座を打ち切ったという。
消費者支出の冷え込みの背景には、家計債務の急上昇があると見られている。ブルームバーグが伝えたCEICのデータでは、中国のGDPに占める家計債務比率が5年前の36.8%から2018年12月には53.2%に上昇。中国の不動産投資ブームによって、この数年住宅ローン加入が急増したためだ。これまで不動産価格の上昇が続いていたが、不動産販売数の低下が予想されており、それにともない価格の伸びも抑制される見込みだ。
こうした中、リスク分散の観点から一層関心を集めるようになっているのが人口で中国(14億人)に次ぐインド(13億5,000万人)だ。2019年1月に開催された「世界経済フォーラム」でも主要トピックの1つとしてインドの消費者市場についての議論がなされていることからも、注目度の高まりがうかがえる。
インド消費者市場の要は、今後10年で台頭してくるミレニアル世代とZ世代。インド経済は、家計の低い債務比率と高い貯蓄率が特徴で、今後消費が伸びる基盤を有している。注目を浴びるインドの消費者市場。今後10年でどのような変貌を遂げるのか、その一端を覗いてみたい。