インド・ミレニアル世代の消費嗜好
10年後に人口が世界最多となり、購買力のある中所得層が大半を占めることになるインドの消費者市場。その消費嗜好はどのようなものになるのだろうか。
1つは、環境意識の高まり、インターネットインフラの整備、モバイル利用の拡大などを背景としたシェアリングやレンタルサービスの需要増が見込まれる。
スイスの大気汚染対策企業IQAirが世界各都市を対象に実施している大気汚染ランキングがある。この最新版では、トップ20のうちインドから15都市もランクインする結果となった。インドは世界の中で最も大気汚染が深刻化している国となっているのだ。大気汚染は、たばこ、アルコール、ドラッグ以上に寿命を縮める要因になるとも言われている。またゴミ問題とそれにともなう水質汚染も悪化しており、インド国民にとっては健康に影響を与える無視できない問題になっている。

インド国内におけるUber利用の増加やインド・バンガロール発の配車アプリOla Cabsの急成長は、シェアリングサービス需要の高まりを物語るものと言えるだろう。この他にもバンガロール発の相乗りアプリQuick Rideの利用も増加している。

インド地元紙エコノミック・タイムズによると、交通渋滞が悪化する都市部では、通勤時に自家用車の代わりに配車サービスや相乗りサービスを使うトレンドが強まっているという。
シェアリング・レンタル需要があるのは移動分野だけではない。家具や電化製品、衣服などもシェアリングの対象だ。たとえばGuarentedは、ベッド、テレビ、冷蔵庫、またこれらのセットを月額数十ドルでレンタルするサービスを提供。この他、RentoMojoやFurlencoなど同様のサービスが登場している。

もう1つインドの消費者市場で特筆すべきは「インド国内ブランド志向」の高まりだ。英国の市場調査会社Mintelがインド都市部の消費者を対象に実施した調査では、小売店で海外ブランドより国内ブランドを選ぶと回答した割合が46%に上ったことが判明。また国内ブランドの取り扱い有無で、買い物先を選ぶと回答した割合は、ハイパーマーケット利用者で48%、スーパーマーケット利用者で49%に達した。
同調査の責任者Nidhi Sinha氏は、この傾向は特に食品・飲料分野で強いと指摘。インド消費者特有のニーズがあり、地元ブランドはこのニーズを知り、それを商品化することに長けているためだと語っている。かつてインドの小売市場では海外ブランドが幅を利かせていたが、その状況は大きく変わってきているという。
このことはベイン・アンド・カンパニーのレポートも言及。海外の小売ブランドがインド市場に受け入れられるためには、ローカライズとパーソナライズが必要不可欠だと強調されている。
インドでは依然、環境問題だけでなく医療アクセス不足や教育機会不足、女性の社会進出の後れなど消費者市場の拡大を阻害する様々な問題が横たわっているが、女性のキャリア志向の高まりや政府主導の健康プログラムやスキル開発プログラムの実施など、状況は少しずつ変わり始めている。2030年、予想されるようなミレニアル世代がけん引する消費者市場が実現するのかどうか、その可能性に期待が寄せられる。