重要なのはバズによる拡散ではなく、生活者に丁寧に届いているか
MZ:定量的な成果はいかがでしたか。
青木:定量面でも想定を超えた結果が出ました。公開後4週間でYouTubeは約55万回、各SNSを合わせるとトータルで60万回以上再生されています。動画は3分17秒の尺なのですが、1回あたりの平均再生時間が2分半、再生率が70%で、動画広告としてはかなり良い数値だと思いますね。
再生回数が伸びたのは、本編のファンにターゲティングしたYouTube広告配信を実施したのも大きな要因だと思います。過去にYouTube上で『青葉家のテーブル』を再生していただいた方たちに向けて、集中的に広告配信しました。本編を見ていただいた方は、かなりの確率でアナザーストーリーも見たいと感じているはずですから。YouTubeのAIも優秀なので、かなり精度の高いレコメンドができたと思います。

内田:見て欲しい方にピンポイントでリーチできているなと思いました。テレビCMであればリーチ数は桁が1つ増えるかもしれませんが、商品を必要としていない人にも当たってしまうし、15秒で伝えられることには限界がありますしね。
青木:重要なのはバズによる拡散ではなく、ターゲット一人ひとりに直接届けるための流通経路を確保できているかどうか。そしてブランドに対する好意度や選好度がしっかりと向上しているかどうかだと思います。その度合いはアンケートの回答数や質から推測できます。今回の取り組みでは、ツイート数よりアンケートの回答数のほうが多かったので、ある意味狙い通りだったのかなと。
MZ:最後に、今後の展望を教えてください。
内田:私が担当する商品は定期的に変わっていくんですが、どの商品も「ただの日用品」ではなく、その人にとって「特別な何か」になるようなきっかけ作りをしていきたいです。そのために必要なのは、いろんなコミュニティで大事に扱われたり、特別視される存在になることだと考えています。
今回の場合、「『青葉家のテーブル』のファン」というコミュニティで、ソフラン良いよねという印象を持っていただけた。それを他のコミュニティでも展開していきたいですね。
青木:実は、映像レーベルを作ろうと思っています。僕たちのお客様が好きそうなスタイルの作品だけを作るレーベルをやりたいんです。レーベル作品は、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)的な構造をイメージしています。つまり、すべての作品で同じ世界観を共有するんです。たとえば、青葉家では脇役だった人が別の作品では主役になっていたりするような。
そのような構造であれば、あらゆる立場の人を主人公にできるので、クライアントごとの課題に合わせた作品を提案できます。カタチにするには、かなりの時間を要すると思います。でも、僕たちは今、長期的に取り組むだけのモチベーションを持つことができている。なんとしてもやりきりたいなと思っています。