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第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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統括編集長インタビュー

“PL責任”を背負い、修羅場を経験しているか?普遍の価値を生むマーケターを目指すなら通るべき関門

 マーケターとひとことで言っても、その仕事の内容や責任の範疇は様々。その中で、ひとつのブランドのPL責任を負い、事業成長を担う経験は、大きな成長の糧となるのではないだろうか。その仮説の下、P&GのブランドマネージャーとしてPL(損益計算書)を預かっていた現スマートニュースの西口一希氏に、PL責任を持つ経験とマーケターのキャリアについて取材。AIの発展が進む今、マーケターが構想すべきキャリアプランを考える。

“PL責任を持つ”とはどういうことか?

押久保:今回は西口さんに、「PL(損益計算書)を持つ経験とマーケターのキャリア」についてうかがいたいと思っています。というのも、以前LDHの長瀬さんとの対談にて、ブランドマネージャーはPLの責任を持つことが不可欠……という話が挙がり、それはマーケターと名乗るなら必須の経験なのではないかと思ったからです。損益の責任をもって初めて、手法論に陥らず、事業の成長を目指せるようになるのでは、と。

西口:確かに、どんな手法を使おうが最終的に利益が出ればいいので、PLを持つと視野が広がりますね。

スマートニュース 執行役員 マーケティング担当 西口一希氏
スマートニュース 執行役員 マーケティング担当 西口一希氏

押久保:ブランドマネージャーやマーケターの定義も様々だとは思いますが、まず西口さんがP&G時代にブランドマネージャーとしてPLをもっていたとき、どのような仕事をされていたのかうかがえますか?

西口:おっしゃるとおり、日本に限らず全世界で一律には定義しづらいですし、僕も定義するつもりはありません。僕はたまたまP&Gで「PLを持つブランドマネージャー」を経験しましたが、PLを持たないブランドマネージャーもいると思います。

 その前提でお話しすると、ブランドマネージャーとは「そのプロダクトやサービスのすべてを担う“社長”」です。担当ブランドを伸ばすための戦略立案、施策の判断と予算を全部預かる、最高責任者ということですね。

 P&Gにマーケティング職として入社すると、大体3~5年で、単一ブランドのブランドマネージャーを任されます。売上規模は数十億から百億ぐらいで、マーケティング投資額は年間数億から数十億。僕が初めて担当したブランドもその程度でした。

「ブランドを伸ばす策を考えつくせ」

押久保:売上と利益の責任を持つプレッシャーは、相当ですよね。自分の年収よりもはるかに高い額になるわけですし。

西口:ええ、額もそうですが、「ブランドを伸ばすためのすべてを考えつくして判断しろ」と任されること自体が、大きな経験だったと思います。基本的にマーケティングで伸ばしていきますが、極論をいうと一切マーケティングをせず、外部と業務提携をして固定費を下げて利益を上げる…という解もある。

押久保:なるほど。当然ですが、マーケティングの手法だけでなくファイナンスも理解しないといけないですよね? PLと、BS(貸借対照表)も読めないといけない。

西口:そうですね、とにかく相当な量の勉強が必要でした。僕の時代はまだデジタル領域はなかったですが、今だと膨大なデジタルの手法にも詳しくならないといけないから、大変だと思います。

 もちろん入社5年くらいのキャリアで細部まで網羅するのは無理なので、P&Gの場合は社内に広告やメディアプラン、販促など各領域の専門部署があり、横断的に各ブランドをフォローする体制になっていました。彼らと十分相談し、理解・把握した上で、全体の投資対効果が数年単位で最大化するジャッジを下す。だからほぼ社長ですよね、“ミニ社長”。やっていることは、経営です。

 もしもブランドが失敗した場合、「postmortem」というレポートを書きます。元は医学用語で「検死」の報告書という意味です。

押久保:検死……!

西口:ハードですよね(笑)。僕も経験がありますが、これを書くのは非常に苦痛です。ただ、すごく冷静に向き合えるので、学びは大きいです。

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集部...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/06/14 08:00 https://markezine.jp/article/detail/31198

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