視聴者の生活行動と強く結びつく映像メディア
この生活行動のマッピングを上下左右の4つに分割して解釈した上で、各映像メディアをプロットした(図表3)。それぞれ解釈すると、次のようになる。

左上:居間・リビングでの長時間滞在時
リビングでのくつろぎや家事などをしながらの映像視聴が該当し、テレビのリアルタイム視聴、録画視聴と、DVD・ブルーレイなどの映像ソフトの視聴が多い。
左下:食事・身支度で時間も手も埋まる時
食事中や朝の身支度をしながらの映像視聴が該当し、テレビのリアルタイム視聴が近い位置にプロットされており、ここもテレビの強い領域となっている。
右上:プライベートな時間と空間
自分の部屋でのくつろぎの時間や、就寝前のベッドでの時間での映像視聴が該当し、YouTube、ニコニコ動画、AbemaTVなどの無料のネット動画と、Twitter上の動画などの領域となる。
右下:手は空いているが細切れな時間
移動中や外出中、あるいは自宅の中でも入浴中などの細切れの時間での映像視聴が該当する。TikTokやInstagramなど、若者に人気のSNSがこのエリアに位置する代表的なものと言える。
このように見ると、スマートフォンを触りやすい環境(図の右の方向)になるほど、テレビから離れて、ネット上の映像メディアを視聴していることがわかる。これは生活行動上、「テレビ受像器」がない場面であるから当然ではあるが、言い方を変えると、テレビ受像器が届かない場所や生活シーンで映像コンテンツが視聴されるようになったことを表しているとも言える。いわば、”ネット動画・映像配信時代の新たな市場”である。
逆にテレビについては、食事を含むリビングでの活動・滞在時によく視聴されているという結果が明確に出ている。とはいえ、その領域にも様々な動画サイト・映像配信サービスが今にも進出してきそうな状況であることもよくわかるだろう。
動画サイトとして最も利用されているYouTubeは、自室を中心とした「プライベートな時間と空間」が主な視聴シーンとなっている。実際に若者へインタビューをすると、自室や寝る前にスマートフォンを使ってYouTubeの動画を見ている発言が非常に多く得られ、そういった生の声ともマッピングは一致する。
いずれにしても、このマッピングで最も重要なことは、”映像メディアは、視聴者の視聴環境・生活行動に強く結びついている”ことである。たとえば移動中であれば、テレビのリアルタイム視聴は難しいのはもちろんのこと、わざわざYouTubeを見るよりも、SNSの文字での投稿をチェックしがてらSNSプラットホーム上で動画を見るほうが楽、ということも発生する。