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奥谷さんと学ぶ、"勝てる"マーケティング思考

「モバイルショッパーマーケティング」でわかる買い手と使い手を区別することの重要性

ショッパーマーケティングで重要性が高まる従業員の役割

 そうはいっても、トライアルのように店舗へのスマートレジカートやカメラを設置して、ディープラーニングで画像解析する体制を整えるほどの巨額投資はとてもできないと考えるかもしれません。そんなマーケターに提案したいのが、モバイルアプリの活用です。

 テキサスA&M大学のメイズビジネススクールで教鞭を執るヴェンカテッシュ・シャンカー教授は、2016年5月に発表した論文で、「モバイルショッパーマーケティング」という考え方を提唱しています(図1)。

図1:モバイルショッパーマーケティングのプロセス(出典:「Mobile Shopper Marketing: Key Issues, Current Insights, and Future Research Avenues」、2016年5月)
図1:モバイルショッパーマーケティングのプロセス(出典:「Mobile Shopper Marketing: Key Issues, Current Insights, and Future Research Avenues」、2016年5月)

 図1は上半分で、「動機付け」「検索とディスカバリー」「評価と選択」「ポスト購買」と続くショッパーの行動プロセスを、従業員(店員)がモバイルテクノロジーでサポートすることを示します。下半分はバックオフィスとの連携です。店員がモバイルデバイスでお客様に対応するようになれば、店員のパフォーマンス評価の仕組みも変わるでしょう。さらに、プロセスをデータドリブンで進められるよう、データマネジメント基盤が全体を支えています。

 お客様がデジタルで下調べをし、モバイルデバイスを持って来店することが当たり前な時代です。お客様がデジタルで準備をするならば、従業員もデジタルで武装しなければ、知識の豊富なお客様を購買に誘導することはもとより、エンゲージメントを築くこともままなりません。店員の役割は今とは様変わりすることになるでしょう。

 別の言い方をすると、マーケターはモバイルテクノロジーでお客様の購買行動に影響を与えるマーケティング活動をする必要があります。それがモバイルショッパーマーケティングです。

 モバイルショッパーマーケティングは2016年に提起された考え方ですが、店舗を運営するすべての企業は深く理解すべきです。

 特に経営陣に理解してほしいのは、従業員の役割が非常に重要になることです。そして、テクノロジー嫌いのままではいられません。過去に本部のデジタルマーケターが導入したテクノロジーが、現場の意向を反映しておらず、土日に問題が起きてしまったり、使いにくいものであったりしたかもしれません。その結果、テクノロジー嫌いとまではいかなくても、苦手意識を持つようになったかもしれません。ですが、もはや商品知識豊富で容姿端麗なスタッフを店舗に配置すれば売れる時代ではないのです。

 全社を挙げてテクノロジー教育に取り組んでいるのがトライアルです。どうすれば店舗の売り上げを伸ばせるかにばかり悩んでいては、従業員の役割、新しい評価の仕組み、そして組織のカルチャーを変えることはできません。従業員にデジタルデバイスを持たせるには、テクノロジーを脅威と捉えることのない環境を作るのが経営陣の役割だと思います。

 テクノロジー教育といっても、トライアルのようにいきなりAI人材の育成までを考える必要はありません。アプリを導入する上でも「ショッパーマーケティング」の考え方は参考にできます。デジタル化するお客様に対応するために、従業員がどれだけデジタル化しているか、店舗がどれだけデジタル化しているかを評価するフェーズが来ています。

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顧客時間のフレームワークも進化する

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この記事の著者

奥谷 孝司(オクタニ タカシ)

オイシックス・ラ・大地株式会社 専門役員COCO(Chief Omni-Channel Officer)
株式会社顧客時間 共同CEO 取締役
株式会社イー・ロジット 社外取締役
株式会社Engagement Commerce Lab. 代表取締役

1997年良品計画入社。3年の店舗経験の後、取引先の商社に出向しドイツ駐在。家具、雑貨関連の商品開発や貿易業務に従事。帰国後、海外のプロダクトデザイナーとのコラボレーションを手掛ける「Worl...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/07/29 09:00 https://markezine.jp/article/detail/31325

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