SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』デジタルクリエイティブの作法

人生を変えるようなブランドとの出会いを表現する

話題にしたくなる情報作りが必要

――統合したコミュニケーションを考える際、デジタル上でのアプローチについても考えると思うのですが、デジタル上で話題を作るために意識していることはありますか。

 ひと昔前は動画の再生回数を上げることを重視するなど、デジタルをどう攻略するかに躍起になっていたこともありました。そうではなく、話題作りのためにどうデジタルを取り込むか設計することが、コミュニケーションプランニングには必要だと思います。クライアントの商品やサービスについて正しくコミュニケーションするための方法をプランニングすることが一番優先すべきことですから。

 作ったデジタルコンテンツが良くてもブランドや売上の成長に必ずしも相関するわけではないということを、クライアントからも悩みとしてよく聞きます。デジタルでの話題作りの先に売上がどうなるかの設計がともなっていないコミュニケーションはやるべきではないと考えています。

 それこそ数年前は多くの企業がYouTube上にバズを狙った動画を投稿していたものですが、ここ数年でそれだけではビジネス成果につながらないことに気づき始めたように思います。

――おもしろいけど、どのようなメッセージが含まれた動画なのかいまいちわからないものも多くありましたよね。とはいえ、メッセージを盛り込みすぎると広告に対する嫌悪感も高まってしまうと思います。そこのバランスはどのように取っていけばよいのでしょうか。

 コミュニケーションを行う際、いかに作り手の意図を感じさせないものにするかはとても大事です。「広告だ」と思われると情報が遮断されやすいので、「自分の欲している情報だ」という姿勢を作ってもらう必要があります。

 とはいえ、そのような情報を企業発信で提供するのは難しいです。生活者は企業発信というだけで身構えてしまう傾向があるので。そのため、情報を受け取ったユーザーが発信しやすい形に整えて、ユーザーから発信してもらえるようにすることが大事だと考えています。

 そのためには、情報を受け取ったユーザーが自分ごと化してくれるまでの流れを設計したコミュニケーションを行うべきです。そのほうが結果にもつながりやすいと感じています。

下着モデルに異例の芸人起用の理由

――ここからは、実際に携わった事例でうまくいったものをご紹介いただきたいと思います。

 直近で言うと、ワコールさんのインナーウェアブランド「Date.(デイト)」でのコミュニケーション事例でしょうか。ブランド担当者からは「『シンクロブラ』というズレにくいノンワイヤーのブラジャーを発売するので、新製品の魅力を知ってもらう方法について一緒に考えたい」と相談をいただきました。

 予算も限られていたので、ニュースとして知ってもらえるようなコミュニケーションをと思い、情報を受け取った側が発信したくなる仕組みを設計していきました。企業発信の情報に興味を持ってもらい、デジタルの力もうまく使いながら話題にしてもらう方法を考えました。

 そして、商品の特徴である「ズレにくいノンワイヤー」を伝える方法として考えたのは、バブル時代のネタで知られる芸人の平野ノラさんをイメージキャラクターに起用して、「時代はズレても、ブラはズラすな。」をキャッチフレーズにしたコミュニケーションです。

平野ノラさんを起用したクリエイティブ(左が第1弾で右が第2弾)

 下着モデルと言えば、これまで女優やモデルなど美しい女性を起用するのが一般的です。しかし、平野ノラさんを起用することで「老舗のワコールなのに芸人」「芸人なのにキレイ」という、世の中の通念を覆すギャップ作りを徹底的に行いました。既成概念の逆を行くことで、興味を持ってもらいやすい構造ができるんです。

 加えて、このコミュニケーションが世に出た後にどうなるかも考えて様々な施策を用意しました。中でもうまく機能したのがSNSの活用です。平野ノラさんご自身のInstagramの投稿で語られた、「自分でも驚くほどいい女に仕上がっています」という本音のコメントに大きな反響があり、多くの方からポジティブなコメントをいただけました。

 起用したタレント側にもともに確信犯になってもらい、一緒に企んで製品の持つ魅力を伝えていく協力者になってもらう。そうしたコミュニケーションが今後求められていくように感じています。

 反響が大きかったので第2弾も作り、2019年春から広告の展開を始めています。今回もズレを作っているのですが、今度はデザインに新たにレースタイプができたのでそれをニュースにしようと、「ニースでレース」というダジャレを軸にしたクリエイティブを制作しました。またプレゼントキャンペーンでは、平成最後を迎えようとしている時期にテレホンカードを景品にするなど、突っ込みどころのあるコミュニケーションを展開して、話題にしやすい仕掛けを入れています。

次のページ
ブランドと真摯に向き合う姿勢が必須

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
定期誌『MarkeZine』デジタルクリエイティブの作法連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2019/06/25 15:30 https://markezine.jp/article/detail/31355

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング