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サブスクリプションモデル大解剖

サブスクが可能にした「クルマの乗り換え」という体験 IDOMの「NOREL」が軌道に乗るまでの3年間

直面した課題は「オペレーション、KPI、コスト」

西井:IDOMは中古車販売・買取の「ガリバー」を展開する一方、2016年の8月にNORELを開始しています。これまでどのような課題があったのでしょうか。

山畑:大きく3つの課題がありました。1つ目は、オペレーションです。「ガリバー」の中古車販売は、ご契約から納車までがサービスの中心でした。しかし定額利用のNORELは、納車はあくまでスタート地点。納車後のお困りごとへの対応はこれまで経験したことがなく、体制を構築するのが大変でした。

西井:おっしゃる通り、サブスクリプションは、契約をすることがゴールではありません。新規契約のCPAを抑えることだけに注力するのではなく、契約後のLTVを伸ばすことを重視すべきですよね。

山畑:2つ目はKPIの設計です。サブスクリプションと通常のセールスではビジネスモデルが大きく違い、「事業がうまくいっているか」「お客さんに満足してもらっているか」を測るためには、新たなKPIを用意しなければなりませんでした

 さらにサブスクリプションのサービスは、リアル店舗や整備部門など、様々な部署に協力を仰がなければ成立しないため、設定したKPIについて社内の理解を得ていく必要もありました。

 3つ目はコストの問題。中でも難しいのは、良い中古車を仕入れて適切な価格で提供していくというマネジメントの部分です。クルマの価値は、年数や走行距離、モデルチェンジの予定など様々な要因によって変動しますし、2次・3次流通も考慮に入れる必要があります。ハードルが高い仕事である一方、IDOMの強みを活かせる領域であるとも考えています。

西井:サービスが軌道に乗るまでに、様々な困難があったのですね。サブスクリプションビジネスは、すぐに黒字化するモデルではなく、ビジネスの基盤を築くため、ぐっとしゃがみ込む期間が必要です。それに耐えきれず、サービスを見直してしまう企業も多い中、NORELを続けてこられたというところから、会社として事業変革に前向きなのだと感じます。

山畑:そうですね。NORELには「クルマを気軽に乗り換えられる世界を作りたい」という思いが根底にあり、短期間で高い収益を上げることを第一に掲げていたわけではなかったため、辛い時期も継続できたのだと思います。

 また社内では、部門ごとに利益を追いかけるのではなく、事業の目的を優先したコミュニケーションができていることも、事業を推進できた理由です。

「サブスクはWeb中心」のイメージを捨てると、解約率が一気に改善

山畑:NORELもサービス開始から3年が経とうとしており、今年に入って潮目が変わってきたという実感があります。解約率に改善が見られ、課題だったオペレーション、コスト、KPIについて正解が見え始めているのです。そろそろ攻めの体勢に入れると思います。

西井:まさに、バケツの穴が塞がった段階にきたのですね。具体的にどんな取り組みが、改善につながったと考えていますか。

山畑:お客様とのリアルな接点を増やしたことがきっかけのひとつでした。サブスクリプションというとWeb中心のイメージがあったのですが、NORELでもオイシックスさんを参考に、深層ニーズを掴むための顧客インタビューを行いました。

 たとえば解約の理由について、Webのアンケートでは「車種が合わない」「価格が合わない」と答えていたお客様に深くお話をうかがうと、「サービスに不満をもっていたわけではない。しかし、どうしてもNORELでなければならない理由がなかった」ということがわかってきました。

 それからは、お客様の期待のひとつ上を行こうという発想に切り替え、新規獲得に使っていた予算を、LTVを伸ばすための施策に充てることにしました。具体的には、「NORELコンシェルジュデスク」という相談窓口を設置したほか、お客様の情報をカルテに蓄積し、一人ひとりに最適なご提案ができる体制を構築しています。

次のページ
期待を超える提案が「NOREL」の価値につながった

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/07/08 09:00 https://markezine.jp/article/detail/31403

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