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激動の時代だからこそ、自分の使命感に従え WHITE代表・神谷氏が語る「広告人のネクストキャリア」


 「デジタル時代だからこそ、広告業界のその先を考えよう」。こう若手に呼びかけるのは、博報堂グループのイノベーションデザイン企業WHITE代表取締役社長・神谷憲司氏だ。かつて国内外の広告賞を受賞するクリエイターだった同氏は、現在、新規事業のサービスデザインを専門としている。なぜ、神谷氏は「脱・広告業界」の道を選択したのだろうか。U30の広告業界関係者を対象に行われたイベントで語った、神谷氏の半生をまとめた。

「賞を獲らなければ価値はない」と考えていた20代

 始めに、神谷憲司氏のキャリアを簡単に紹介する。

 1975年生まれ、現在43歳の同氏は、大学中退後にIBMへ入社。SEやプログラマを経て、映像制作プロダクションの葵プロモーション(現・AOI Pro.)に転職した。同社のデジタルコンテンツ事業部の立ち上げに関わったのち、博報堂グループの広告代理店スパイスボックスへ。その後、スパイスボックス内のラボが独立する形でWHITEを設立、現在に至る。個人のミッションに「新しいことを始める人の、孤独をなくす」を掲げ、若手へのキャリア支援に関心が高い人物だ。

 神谷氏が代表を務めるWHITEは、2017年頃より、広告代理店から新規事業開発支援へと事業モデルをシフト。現在は、同社ビジネスの7割を新規事業開発支援が占めるという。「事業を変換してきたプロセスに、広告人のネクストキャリアのヒントを感じてほしい」と、神谷氏は話す。

 20代の頃の神谷氏は、デジタルテクノロジーに強いクリエイティブディレクターとして、カンヌなどの広告賞も受賞し、華々しい日々を送っていた。しかし、その心情は穏やかではなかったという。

 「20代の頃の僕は、広告賞を獲らなければ生きている価値がないと考えていました。また、優秀なクリエイターと仕事をしたい、日本だけでなく世界初のデジタルキャンペーンをやりたいなど、話題や評価を意識してばかりでした」

 一方、「自分は誰のために、何のために広告に関わっているのだろう」と、わだかまりも募っていた。頭では「クライアントのビジネスのため」と理解しているのだが、自身のインサイトとマッチしないことに、悩んでいたそうだ。

 「今振り返ると、当時は価値=利益という考え方が主流でした。しかし僕は、体験して、喜んでもらうという体験価値を無視していいのだろうかと考えていたのです。もちろん利益は大切ですが、体験価値を重ね、クライアントのビジネスへ貢献することが本質です。しかし、広告人時代は考えの整理がつかず、答えは出ないままでした」

既にある価値ではなく、存在しない価値を作りたい

 そのような悩みを抱えながらも、神谷氏は2015年に39歳でWHITEを設立する。

 先述した通り、親会社のスパイスボックスから独立した同社は、神谷氏を含めて3名でスタート。IoT専門の商品開発会社だったが、実態は請負型のクリエイティブブティックに近かった。広告目的の範囲で、クライアントの宣伝部と一緒に、商品開発に関わる日々だったという。

ペットボトルをIoTデバイスに変えるIllumicup
ペットボトルをIoTデバイスに変えるIllumicup

 そんな折のことだ。2016年、WHITEはグループ再編により、一気に35名の出向社員を迎えることになる。神谷氏は経営を優先し、WHITEは広告代理店事業に注力していった。やがて、9割の売上を広告事業が占めるようになり、広告代理店としての存在感を増していく。

 しかし神谷氏は、2017年にWHITEのリスタートを決断した。それは、なぜか。

 「広告代理店の事業を継続することも、可能でした。しかし、改めてやりたかったことを言語化したのです。『新しい、を価値にする』というミッションを考えたとき、自分たちがやるべきことは広告ではないと気づきました。僕たちは、まったく何も存在しないところから価値を作っていきたい。ならば、既に形ある価値を伝える広告ではなく、新規事業開発をやろうと決めたのです」

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/07/09 16:37 https://markezine.jp/article/detail/31423

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