チャネルアクティベートを阻害する「7つの落とし穴」と対策
積極的にテクノロジーを活用し、チャネルアクティベートを推進する企業が続々誕生する一方、多くのリテールで導入が進んでいないという側面もある。
テクノロジーが進化しても、導入が進まない理由は何か。岩井氏は、チャネルアクティベートを阻害する「7つの落とし穴」が存在すると指摘する。
チャネルアクティベートを阻害する「7つの落とし穴」
(1)顧客戦略目標が不明確
(2)ブランド価値が不明確
(3)体験価値が不明確
(4)顧客時間の分断
(5)オペレーション体制の不備
(6)ID統合/データ基盤の不備
(7)成果評価指標の不整合
「特に重要なのは、2つ目のブランド価値です。自分たちは、誰にどのような価値を提供するのか。事業を複数もつ企業などでは、そこが曖昧な場合があります。これはすべての要素に影響します。評価指標も定められないし、どのような顧客体験が理想なのかもわからない。そうなると、各チャネルをどのように連携すればいいかも決められませんよね」(岩井氏)
一般的に、新たなテクノロジーの導入を阻害する要因として、社員のリテラシー不足など人的な要素が挙げられやすい。岩井氏いわく、人の問題もあるが、より根本的な戦略要素とそのつながりが明確になっていないケースが多いという。ブランド価値のような概念的なものほど、メンバー間での認識の齟齬をなくすための言語化は必須だ。
では、上記7つの落とし穴を回避し、チャネルアクティベートを成功させるためには具体的にどのようなステップを踏めばいいのか。
「チャネルアクティベートを実行するにあたり、まずは自社の顧客マーケティング課題を俯瞰的に把握することが欠かせません。そこから、ターゲット像・自社チャネル・競合の現状を把握したうえで、理想的な顧客体験を設計します。当然のことのように見えますが、その設計をもとに各チャネルにブランド価値を反映させるためのデジタル活用を進めることが重要です」(岩井氏)
このように、チャネルアクティベートを行うには様々な部署・職能を巻き込む必要がある。店舗は店舗で、ECはECでと、チャネルごとに戦略を立てる企業はまだ少なくないだろう。ただ、それでは個別最適化に終始してしまい、本当の意味でのチャネルアクティベートは実現できない。岩井氏は、成功させるためには全社的に取り組むべき経営課題と捉えることが重要だと強く述べ、セッションを締めた。