SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』特集

ファッション×ITで事業を拡大 「メチャカリ」が黒字化までの3年間を語る

予想外のユーザー属性ニーズに合わせてサービスを拡充

――メチャカリは、黒字化までに3年かかったとうかがいました。これは、計画通りの進捗でしたか。

 まずは、事業計画で設定した有料会員数1万1,000人を目標にスタートしましたが、計画していたペースより早く黒字化を達成できました。ただしユーザー数に関しては、きれいな直線を描いて伸びてきたわけではありません。アパレルの特性ですが、シーズンの立ち上がり時期に階段状に増えていきました。

 また事業を進めていくなかで、ユーザー属性が当初の想定と異なることがわかりました。メチャカリの立ち上げ当初、ユーザーは当社の顧客中心になるだろうと考えていました。しかし蓋を開けてみると、当社の顧客は3割に過ぎず、7割が新たなお客様だったのです。ユーザー調査をしてみると、仕事や趣味など自分のやりたいことに忙しい20代の社会人の方や、家事や育児に忙しい子育て中のママさんなどが多く、想定していたファッションに貪欲でコスパを求めるような層ではなかったのです。メチャカリを利用されるお客様は決してコストパフォーマンスだけを重視しているのではなく、利便性やファッションを楽しむことを大切にしているのです。

 そこで、このユーザー属性を踏まえたサービス拡充を進めてきました。借りられるブランドも、当初は「earth music&ecology」など自社ブランドのみでしたが、現在では他社ブランドも扱うようになっています。また意外だったのは、購入機能のニーズが強かったことです。メチャカリでは、60日間返却しなければそのまま商品を貰うことができます。しかし、定期的に行うアンケートには「60日待ってプレゼントされるよりも、早く購入したい」という声が寄せられていました。このため購入できるよう機能追加したところ、お客様に大変感謝されお礼のメールまでいただいたことが、私の中でとても印象的なこととして残っています。

――ユーザー属性や利用傾向に合わせて、サービスが進化していったのですね。

 ベーシックプランの料金設定や商品設計は変えず、商品の見せ方や追加機能などのニーズを取り入れて、実際に利用されているお客様にふさわしいサービスの形にしていきました。また、広告のメディアプランニングやアプリ内のデザイン、ファッションの訴求ビジュアルも、こうしたユーザー属性を意識して工夫しました。今でこそInstagramとの相性は良いですが、メチャカリがサービス開始した当初のInstagramはモデルやインフルエンサーの利用が多く、メチャカリユーザー層とはあまりマッチしなかったり、最適なメディアプランニングには苦労しましたね。また、当時は韓国ファッションなどビジュアルにこだわるECサイトが注目を浴びていました。おしゃれな雑誌やカタログのような商品画像を採用しており、メチャカリも一時期はこれらのクリエイティブをベンチマークとしていました。しかし、お客様からは「等身大ではない」「モデル着用写真と比べ、実際に着たら丈が長く、参考になりません」という反応が多かったのです。ユーザー属性と異なるアウトプットをしてしまったと気づき、以降、メチャカリには「自分にリアル」という世界観作りを心がけています。

パーソナライズ化した施策で利用を促す

――サブスクリプションには、ARR(年間定期収益)やチャーンレート(解約率)など、ビジネスの状態を表す様々な指標があります。メチャカリでは、どのような指標を大切にしていますか。

 新規入会率とチャーンレートに着目しています。メチャカリは、月額5,800円のサービスですが、コンシューマー向けのサブスクリプションビジネスにおいては、月額料金3,000円の壁があると考えています。やはり、気軽に100円、300円を払う感覚とは違いますから、入会するかどうかは慎重に検討されると思うんです。だからこそ、お客様には実際に使っていただくことが大事だと考えています。また、貸出回数はチャーンレートと密接に関係しており、やはり利用頻度の高いお客様ほど解約されません。逆に、利用回数が少なくなった場合は解約の予兆だと捉え、利用を促す施策を行います。

 具体的には、マーケティングオートメーションによるアプリのプッシュ通知です。お客様の行動データを基に、最終返却日の翌日や最終貸出の2週間後などに、次の利用を促すお知らせを出しています。

 また、約1万点のアイテムの中から、お客様が自分に合ったアイテムを見つけやすくなるよう、昨年10月にパーソナライズスタイリングAIチャットボットを実装しました。これは、メチャカリに登録されている1万種類以上のアイテムから、そのお客様にふさわしいコーディネートやアイテムを提案するという機能です。閲覧履歴・行動履歴を基にしたレコメンドエンジンをベースにし、チャットライクなコミュニケーションにより、実際に接客されているような体験を届けています。お客様の多くは、忙しく、自分でファッションを選ぶことが難しい方々。AIチャットボットの利用頻度は上がっていますので、パーソナライズの精度をもっと高めていきたいと思います。

 また、ブランドの拡充も進めています。先ほどもお話ししたとおり、メチャカリのユーザーは当社ブランドの顧客が多いわけではありません。ファッションサブスクリプションという新規性を好んでいたり、忙しい毎日の中でいろいろなファッションを楽しみたいというインサイトがあります。こうしたユーザーの好みに合ったファッションを幅広く揃えるべく、引き続き努めていくべき課題です。

次のページ
ファッションを借りる文化を定着させたい

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
定期誌『MarkeZine』特集連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:39 https://markezine.jp/article/detail/31583

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング