継続的な関係を築くには「価値観の共有」が重要
西井:ソフト面のサービス改善に関してはいかがでしょうか。様々な属性の人が集まって暮らすというのは楽しいですが、デリケートな部分もあると思います。
佐別当:やはり、家守の存在が心強いです。彼らがいるからこそ、これまでのところ大きなトラブルは起きていません。またそれ以前に、サービスの価値観を共有することに気を配っています。
西井:サブスクリプションは長期的な関係を築いていくビジネスなので、価値観を理解してもらうことは大切ですよね。具体的にはどのようにしているのでしょうか。
佐別当:私たちが提供したい価値は、日本全国に帰る場所を作ること。お客様には、「月額を払ってもらえばそれでよい」のではなく、何度も使っていただき、地域との交流を楽しんでいただきたいんです。この価値観が異なると、会員と長期的な信頼関係を築くことは難しく、お互いに幸せではないと思います。
そのため会員になっていただく方とは丁寧にコミュニケーションをとるようにしています。また、地域の交流に関心が薄い方やサービスの価格のみにメリットを感じている方には、改めてアドレスのビジョンをお伝えし、それでもやはり目的が異なっているとなった場合には、ご返金の上、退会をご検討いただくこともあります。

西井:会員との継続的な関係を作る設計ができているんですね。シェアリングサービスは価格メリットが挙げられがちですが、本当に届けたい価値はそれではないことがわかります。
オイシックスも、届けたい価値は食を通した豊かさです。お客様の中には、オイシックスをきっかけに料理が好きになり、料理教室まで開いている方もいらっしゃいます。価値観で繋がれるサービスに関われることは、幸せなことです。
佐別当:ADDressの価値は、会員・家守・地域の人という、人のコミュニケーションがあること。たとえば、鎌倉の物件で出会った会員同士が、今度は違う物件で会おうと約束したり、アドレスに関係なく旅行へ行ったりという関係が生まれているのです。
急成長への戦略は、サービス提供者/利用者の転換
西井:最後に今後の展望を教えて下さい。今後に向けて、どのような成長戦略を描いていらっしゃるのでしょうか。
佐別当:3年先の成長イメージは描けています。ADDressはシェアリングサービスですが、CtoBtoCのモデル。企業が間に入っているからこその安心感や、家守によるコミュニティ作りの仕組みが強みです。それらを生かし、まずは10万人の会員基盤を目指します。しかし、それだけでは、従来の賃貸仲介サービスと大きく変わりません。10年先のために、新しいモデルを生み出したいと動いています。
それは、ADDressの会員が物件オーナーになる仕組みです。ADDressを使って全国を飛び回っているうちに、自分の家が欲しいと思われることもあるでしょうし、その家をADDressに貸したいニーズが生まれるかもしれません。会員が物件オーナーへと転ずる割合が20%や30%になると、サービスは急激に成長するはずです。これを戦略の一つとして、取り組んでいきたいです。
西井:サブスクリプションサービスの根底には、そのサービスでしか得られない体験価値があります。ADDressは、サービス提供者と利用者の関係ではなく、お互いが一つの体験価値に共感し、一緒に楽しんでいく世界が広がっているんですね。旅好きな一人として、ぜひ大成功してほしいと思います。