ライフスタイルを激変させるライドシェアサービス
ライドシェア、というのは簡単に言うと個人の所有する自家用車を用いて、乗客を乗せ、目的地で降ろし、タクシーのようにその移動運賃を得るというものです。そしてその仕組み(プラットフォーム)を提供している企業が世界中に存在しています。
代表的なサービスはUber(ウーバー)です。日本では法律(道路運送法)で自家用車による個人の送迎サービスは禁止されていることもあり、2019年7月現在、日本においてはタクシーやハイヤーを呼ぶという機能に限定して展開されています。日本においてはこのような状況ですが、Uberのプラットフォームは世界中で利用されています。
グローバルでは既に、様々な企業がUber同様のサービスを提供しており、国別にマーケットシェアの獲得競争が起きています。ライドシェアサービスは、生活者のライフスタイルにどの程度浸透し、またどれくらいのビジネス規模になっているのでしょうか。そして関連するマーケットはどう広がっていくのでしょうか。
米国では既に頭打ち 各国で異なるライドシェアサービス市場の様相
日本では「若年層の車離れ」と言われていますが、その理由の一つにシェアリングエコノミーへのシフトチェンジが起きていることが挙げられます。そして、その動きは数字からも明らかに読み取れます。
以下の表は、グローバルで自動車販売台数の多い国の2016年と2017年の自動車販売台数と成長率、および各国の主要なライドシェアサービスアプリの月間平均利用人数と成長率です(日本を除く)。
中国、米国、インド、イギリス、ブラジル、ロシア、インドネシアといった7ヵ国の自動車販売台数の平均成長率は0.6%ですが、インド、ロシア、ブラジルにおいては未だに自動車の販売台数は10%前後の増加傾向が読み取れます(図表上部)。
一方、App Annieのデータによると、各国で利用人数の多い主要なライドシェアサービスアプリの1ヵ月あたりの平均的な利用人数(MAU = Monthly Active User)やその成長率にも大きくバラつきがあることがわかります(図表下部)。
たとえば中国は自動車販売の成長は低いものの、配車アプリ「DiDi(ディディ)」の急速な普及により成長率は70%と高くなっています。自動車の所有における法規制やコストの面もあり、明らかにライドシェアサービスへのシフトチェンジが起きています。
米国は自動車販売、ライドシェアサービス共に頭打ちの様相です。ブラジルとロシアにおいては、上述したとおり自動車販売台数は依然増加しており、加えてライドシェアサービスの利用人数も急増しているという「成長国」と定義できるでしょう。
このように自動車のライドシェアサービスも、国によってビジネスの成長環境や競争環境は様々です。一様にライドシェアのビジネスが拡大していると思い込むことは、経営資源を投下する意思決定をする上で非常にリスキーです。各国のビジネス規模や成長度合い、競争環境を定量的に把握したうえで、事業戦略を考えることが第一歩であることは言うまでもありません。