神戸デジタルラボ講演「利便性の高い検索UIとは」
第三部は「検索サジェスト最前線」と題し、国内外の大規模ECサイトでどのような検索インターフェースが実装されているのかを神戸デジタル・ラボの橋川隼人氏が解説した。
アパレル企業を対象とした調査から、サイト内検索の重要性を裏付ける興味深い結果が得られた。全体の平均CVRが2%程度のECサイトにおいて、5回検索を行ったユーザーのCVRはなんと10%にもなったと言う。「キーワード検索をする人のCVRが高いという事実は意外と知られていない」と橋川氏は話す。
国内外の売上TOP30サイトを対象に、キーワード検索のインターフェースを調査した橋川氏は、検索の利便性を追求する上で重要なこととして3つのポイントを挙げた。
1.どこからでも検索窓にアクセスできること
検索窓が発見しやすく、なおかつ画面を阻害していない好例として、ZOZOTOWNの名前が挙がった。虫眼鏡アイコンが表示されており、そこが検索窓であると直感的にわかる仕様だ。
2.入力補助の機能が実装されていること
規模の大きいアパレルECや総合通販の場合、商品カテゴリが区分されていることが重要だ。この点は海外サイトに先進的な取り組みが見られた。米国の総合通販サイトJoyBuyは、文字を入力すると縦に伸びたサジェストが表示される。タグの形式でキーワードが表示されるため、1回の検索にさまざまなキーワードを盛り込むことが可能となる。
最近は入力した文字に合わせて商品画像付きで検索ができる「画像付きサジェスト機能」が増えてきている。文字列をクリックするとキーワード検索の結果が表示され、商品画像をクリックすると商品の詳細ページへダイレクトに遷移できるというもの。直感的に商品にたどり着いてもらえる点が特徴だ。
3.人気のキーワードが提示されていること
ZOZOTOWNの場合はユーザーからよく検索されている人気キーワードと、ZOZOTOWNが選んだ注目のワードを区別してタグ表示していた。この形式はどのサイトにとっても正解というわけではなく、自社サイトの検索窓でどのようにキーワードを表示させるかは「ユーザーやサイトの特徴を見て判断すべき」と解説した。
最後に橋川氏は、「検索の目的は意図する具体的な商品にたどり着いてもらうこと。ベストなインターフェースはサイトやユーザーによって異なるため、自社サイトの特徴を捉えつつ柔軟に実装していくことが大事」と語り、講演を締めくくった。
SHIPS講演「大幅組織改変でマーケティングもOMO思考に」
第四部に登壇したのは大手アパレルブランドSHIPSでデジタルマーケティングの責任者を務める萩原千春氏。
SHIPSは今年3月に大きな組織改変を行った。自社ECサイトのマーケティング、クリエイティブ、公式アプリ、SNSなど、それぞれの分野ごとに細分化されていた課をひとつに統合し、スピード感の向上と連動性の強化を目指すことになった。それに伴い乱立していた各種自社サイトにも大幅な手が加えられ、コーポレートサイト、ECサイト、オウンドメディアがひとつに統合された。
「シームレスな組織やサイトになったことで、実店舗とECそれぞれの売上だけでなく、実店舗に貢献するEC売上やECに貢献する実店舗の売上など、相互に影響を与えるマーケティングが意識できるようになった」(萩原氏)
そう語る萩原氏がpopIn Actionに寄せる期待は大きい。これまでSHIPSでは売上、来店数、サイトのセッション、CVRを上げるためにさまざまな手を打ってきたが、注文単価の引き上げ施策が不足していた。「EC展開外商品を着用したコーディネートページも、アップセル、クロスセルにつながる資産価値の高いコンテンツになる」と萩原氏は話し、popIn Actionがその点に貢献してくれる施策だと見込んでいる。
また、これまでは「シャツ」と検索してもシャツの商品情報しかヒットしなかったが、サイトが統合されたことによって「シャツ」にまつわる特集コンテンツや店舗イベントなど、今後はキーワードに対して多様な情報を提供していきたいと語った。