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OMO時代のアプリ戦略の到達点 マーケティングプラットフォーム「Coke ON」はなぜ成功したか

アプリ機能が自販機営業のセールスツールに

――アプリとしては順調に伸びてきた感がありますが、ビジネス的な成果としてはいかがでしょうか。

 コカ・コーラのビジネスは、商品開発とマーケティングを担う日本コカ・コーラ社と、実際の製品の製造・販売を行う全国5つのボトラー社の共同事業です。「Coke ON」についても、当初は、各ボトラー社の販売戦略でどのように活用していくのか、それぞれ異なる方針がありました。しかし、最も積極的だったボトラー社の1つがCoke ONを活用して自販機利用を向上させた成功事例を打ち立て、今は全社で「Coke ON」の活用に向けてアクセルを踏み込んでいるところです。

――具体的な成功事例を教えてください。

 「Coke ON」アプリ全体に対して共通で実施するキャンペーンに加えて、自販機単位でカスタムしたキャンペーンを活用することで、自販機のルートセールス担当がいろいろな提案をできるようになるんですね。たとえば、社員の健康を考えて福利厚生が充実させようとしている会社のオフィスに自販機の設置を提案する場合、「コカ・コーラの自販機を置くと、トクホ製品や機能性飲料品のスタンプを2倍にして社員の皆さんの健康づくりに役立ちます」という提案をする感じです。

 こうすることで、「Coke ON」を「自分たちのセールスツール」として提案できるんです。先行して「Coke ON」を活用していたボトラー社のエリアは、他のエリアに比べ、共通プロモーションでもかなりの成果を上げられるようになりました。だからすべてのボトラー社が「Coke ON」を応援するようになり、結果的にお客様にも喜んでいただける。みんなの成功体験が横でつながることで、コカ・コーラ全体を応援してもらうサービスになってきたわけです。

 Coke ONはデジタルのコンテンツなので、製品・エリア・自販機・お客様・時間帯などといった様々な軸での限定プロモーションが可能です。そこに、コカ・コーラならではのドリンクやスタンプチケットといった付加価値を組み合わせることで、お客様のご要望に応えていくことができる。お店起点の要望については、ボトラー社の現場の意見を取り入れ、いろんな仕組みを作っています。

コカ・コーラ製品をより楽しめるように、今も「Coke ON」は進化中

――これまで3年半アプリを展開してきて、お客様の購買データなども蓄積されてきたと思います。データをどのように活用しているのでしょうか。

 アプリを持つことはメンバーシップカードを持つことと同じなので、過去の購入履歴からおすすめ商品やコンテンツを提案することができるようになっています。また、自分の誕生日を登録したユーザーの方には、誕生日に特別なスタンプをプレゼントしたり、スタンプ2倍のプレゼントなどを提供し、ささやかな楽しみや喜びに貢献しています。

 ちなみにお客様の利用データに基づき、アプリの使用頻度の改善にも取り組んでいます。ドリンクチケットの使い方がわからないようであれば、使い方を表示してチケット利用を促したり、スタンプ2倍オファーを行ったり、使い続けてもらう施策を展開しています。

――具体的に売上向上につなげるためのデータ活用についてはいかがでしょうか。

 データ活用やAIモデルの適用だけが目的となり、本来意図していたサービスから乖離してしまい複雑化してしまうものがありますが、当社はシンプルが一番だと考えています。そういう意味では、お客様の目線に立った時、どんなものなら便利なのかを絶えず意識しています。

 もちろんMAやAIモデルと組み合わせた施策もいろいろやっていますが、基本的には「お客様にいいものを」というのが基本です。

 近年テクノロジー界隈ではIoT(Internet of Things:モノのインターネット)やAIなどの技術が注目されていますが、これらの導入は「目的」ではなく「手段」です。私はスマホアプリと自販機とAIを組み合わせることで、Interactive Offer at The moment(瞬間をとらえたおもてなし)や、Intelligent Operation by Telecom(通信によるオペレーション革新)という、2つの「目的」としてのIOTを実現したいと思っています。

――今後の方針について教えてください。

 多くのお客様から「『Coke ON』アプリを使ってから、自販機がなじみのお店みたいに思えてきた」という声をいただいています。自販機は無人の箱ですが、「Coke ON」を使うことで「おもてなし」になり、自販機を「いち小売店」として愛着を持っていただけるんですね。

 なので「Coke ON」と自販機も、お客様のことをより深く知り、それに合ったサービスを提案できるようにする。これを重要な取り組みとし、洗練させていく構えです。具体的には、デジタル施策で様々な情報を収集し、それをやはりテクノロジーで正しく解釈することで、よりお客様に寄り添った施策を提供していく。

 また、コカ・コーラ製品自体の楽しみをより拡張することも考えています。6月に搭載したカメラ機能は、製品パッケージにかざすとARコンテンツを楽しめるようになっており、自販機だけでなく純粋に「商品を楽しむ」という付加価値提供につながりました。当社の製品を楽しんでもらえる方に、「Coke ON」を便利でおトクなコカ・コーラのアプリとして認知してもらうことが次のステップです。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

江川 守彦(編集部)(エガワ モリヒコ)

東京大学文学部を卒業後、総合広告代理店でマスメディアの媒体営業業務を経験し、出版社に転じて人文系の書籍編集に従事したのち、MarkeZine編集部に参画。2018年よりオーガナイザーとしてMarkeZine Dayの企画にも携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/09/26 09:00 https://markezine.jp/article/detail/31864

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