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P&Gのパンテーンが、社会問題に切り込むキャンペーンで果たした目的と上げた成果

問題提起から改善へと導くキャンペーン設計とは

関:キャンペーンの一番初めに行ったのは、全国の現役中高生・卒業生・先生の男女合計1,000人を対象にした「髪型校則へのホンネ調査」でした。その調査結果をもとにコミュニケーションを行っていきました。

中村:髪型に関する校則に課題を解決することはすぐ決まったのですが、それをどう解決していくのかにはものすごく時間をかけて議論しました。学生だけに向けて、「黒染め強要はダメ」「地毛証明書は本当に出す必要があるのか」といったメッセージを出しても、校則で決まっているからどうにもなりません。

中村:そのため、事前に調査を実施し、先生たちの気持ちも探りました。その結果、約70%の先生が「勤務している学校の髪型校則に疑問を感じている」、約87%が「時代に合わせて髪型校則も変わっていくべきだと思う」ということがわかりました。

 この結果を見ると、地毛証明書や黒染めに関する指導は単なる慣習、固定観念でしかなく、髪型校則について改めて考えるきっかけを作るべきと考えました。

MZ:調査の後、どのようなクリエイティブを展開したのでしょうか。

大倉:まず調査で得られた回答を用いてクリエイティブを制作し、新聞広告を3月18日に出稿。さらに、長編の動画広告や交通広告、様々なPR施策を行ってきました。

中村:キャンペーン序盤では、生徒たちの気持ちを社会に対して提示していきました。Twitterでも「#この髪どうしてダメですか」というハッシュタグで意見を募り、学生から「本当にこの校則っているのかな」「私はこういう校則に困っています」というような声がかなり多く集まりました。

 そして、社会に対して問題提起するだけでは終わらず、学生と先生、社会全体を巻き込んだ議論の場を作れないかと考えました。その中で3月27日にTOKYO FMの「SCHOOL OF LOCK!」というラジオ番組で、髪型校則についての声を募りました。さらに、4月8日には、生徒と先生が対話する長編のドキュメンタリー映像を公開し、学生たちが多く通学する場所で交通広告を掲出しました。学生たちに課題を認識してもらうだけではなく、本質的な課題の解決を目指し、コミュニケーションを展開していきました。

どのような受け取り方になるかの理解が重要

MZ:今回のキャンペーンを設計する中で意識した点はありますか。

関:先生と生徒に対してコミュニケーションを行っていますが、生徒も先生も十人十色です。たとえば、生徒の中には地毛が茶色で黒染め指導されたという生徒と、そうではない生徒がいます。その他にも様々な立場の方がいるので、メッセージの受け取り方は異なってきます。その点を理解して、丁寧にコミュニケーションを紡いでいくことが重要だと思います。

MZ:実際に、取り組みを通じて社会に変化は起きましたか。

関:自然発生的に署名プロジェクトが立ち上がり、世田谷区の教育委員会が、2019年の秋から区立中学の校則をすべてWebサイトに公開する動きも起きました。2年前に黒染め指導が問題になったときは、こうした流れは起きなかったと思います。

 さらには、民間有志の大人が立ち上がり、約2万件のオンライン署名が集まる動きも見られました。その後、東京都教育委員会が地毛の黒染め指導を無くすことを明言し、都立高校・都立中等教育学校の全校長に対しても、通知が届きました。

 ブランドメッセージとブランドアクションを通じ、社会が前向きに動きはじめたという点に関して、とても価値があるキャンペーンになったと思っています。

MZ:昨今、社会問題にフォーカスを当て広告やキャンペーンを行う事例が増えていると思います。しかし、こういったキャンペーンは、一歩間違うと「なぜそのブランドがそんなことを言ってくるのか」と炎上するリスクもあるはずです。そのような施策に取り組む際、どういったことに気を付ければ良いのでしょうか。

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社会問題に切り込んだキャンペーン、成功の鍵は?

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この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行う。2008年よ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/09/12 09:00 https://markezine.jp/article/detail/31915

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