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どの顧客接点からでも提供する価値は同じ 堀場エステックがMarketo Engageで進める営業変革

 BtoB/BtoC、企業規模を問わずに、顧客体験を重視する様々な企業で活用が進む「Marketo Engage」。堀場エステックも導入企業の一社である。同社は京都に本社を置く分析・計測機器メーカーの堀場製作所の100%子会社であり、半導体製造装置で使用する流体の流量制御機器を主力商品としている。2018年の「Marketo Champion」受賞者の一人でもある志知氏にこれまでの取り組みを聞いた。

どうすれば売上に貢献できるのか 営業出身のマーケターとしての課題感

――まず堀場エステックの事業内容とご自身の業務内容からお話しいただけますか。

志知:堀場エステックはHORIBAグループの一員で、自動車計測、環境・ プロセス、医用、半導体、科学で構成される5つの事業体のうち、半導体事業を展開している会社になります。私の役割は営業本部の中のデジタルマーケティングチームのリーダーで、オフラインの展示会やセミナー、オンラインのWebサイト運営からメール施策まで、あらゆる顧客接点を活用し、販売促進活動を進めることです。現在のチームメンバーは全部で5人。兼任でITのメンバーも在籍しています。今年からインサイドセールスのメンバーも加わりました。

――営業に成果を示すことを重視してきたと聞いています。Marketo Engageの導入目的や背景について教えてください。

志知:導入自体は2015年の秋ですが、本格的に活用を始めたのは2016年に入ってからです。当時の関西では、MAについての情報を得られる機会が少なく、セールスフォース・ドットコムのユーザー会に参加した時の会話の流れでキャンペーンの話になり、MAとMarketo Engageの存在を知りました。ちょうど営業から販売促進に異動し、展示会を担当することになったばかりの頃でした。どうすれば売上に貢献できるかを考えていた時、MAを導入すれば営業に貢献できるかもしれないと思ったのです。今は国内での活用が中心ですが、グローバルで使える製品であることが導入の決め手になりました。弊社と科学事業部の二つの組織が最初に使い始めました。

――当初から売上への貢献という課題に向き合っていたのでしょうか。

志知:私自身が営業にいたことがあり、売上にこだわりがあります。間接部門に移っても、数字をシビアに見られていることを理解していました。もちろん営業への貢献はすぐに実現できたわけではありません。試してみたいと思う人を募って、集まったのが営業出身のメンバー3人でした。そのメンバーはいずれも幅広い商材を扱っており、担当するお客様の数も多く、人海戦術では限界があると感じていた人たちでした。お客様のことは私自身も営業出身ですから、肌感覚として知っています。導入したツールをどうやって使うかを皆で考えるところから始めました。

株式会社堀場エステック 営業推進部 デジタルマーケティングチーム チームリーダー 志知文氏

失敗から学んだ、インパクトが大きいところから始めることの重要性

――営業マインドをもっている人がMA活用に挑んだことが成功した要因の一つに思えます。

志知:スモールスタートからスケールアウトさせるのが王道だと思いますが、最初は失敗しました。私たちは色々な商材を扱っていますが、営業があまり売ろうとしない少額商材をマーケティングが受け持てば、工数削減になると考えたのです。でも、実はその商材はナーチャリングの効果が出るものではありませんでした。アドビ(旧・マルケト)のコンサルタントに相談したところ、営業が売りたい商材ではないことが問題と指摘されました。マーケティングが営業と共通目標を持つことが重要と気づいたのはその時です。

 2017年からは、営業がプロジェクトを立ち上げて取り組むテーマがあったので、その担当に掛け合い、MAを使った施策を一緒にやろうと提案し、受け入れられました。

――営業の優先順位を理解し、サポートしてくれるのは営業としてもうれしいでしょうね。

志知:失敗から、最初はインパクトがあるところを狙う必要があることを学びました。それ以来、やったことを中心とする定性的な報告から、施策を実施した成果をコンバージョンレート、商談化率、商談数などを定量的に報告するように、私たちも変わりました。フィードバックを営業のトップからもらえるようになりましたし、それだけ高度なことをやっているなら専任体制が必要と認識してもらい、その体制ができたのが2018年夏のことでした。

 2018年は主力商材の領域と拡販したい商材の領域を分け、営業とそれぞれの施策の方向性を話し合い、施策を進めました。また、インサイドセールスは営業との連携を効率化しようという流れで設置することになりました。私たちの取り組みに営業からの反発もありましたが、お客様を中心に定量的な数字を共通言語に話をすることで、インサイドセールスやマーケティングからそれぞれ「この数字ぐらいなら渡せる」と提案し、少しずつですが納得してもらえるようになりました。

CoEの設置をきっかけに進んだ透明性のあるMA活用

――次にグループ全体での活用の話を聞きたいのですが、ノウハウを共有し、全社的に展開した方が最終的な成果が大きくなるという理解があって、活用が進んだと思います。きっかけは何だったのでしょうか。

志知:最初の導入は弊社を含む二つの組織でしたが、他にもいくつか使いたいという事業部が出てきたのです。それぞれが導入コンサルティングを受け始め、収拾がつかなくなってきたときにアドビから提案されたのが、組織横断的に取り組みを進めるCoE(Center of Excellence)の設置でした。

 バーチャルな組織で、タスクフォースを作ったわけではありませんが、インスタンスやデータを整理し、「こんな時はこうする」というルール作りを皆で考えて進めました。明文化されたルールがあれば、困ったことがあっても、サポートに聞くよりスムースに解決できますし、サポートに聞いたことは皆で共有すれば、グループ全体のナレッジになります。そのナレッジベースを作るルールも皆で考えました。失敗したことは学びの材料に、成功したことはテンプレート化して展開するわけです。

 今では毎週火曜日にリモートで定例会議をして、月に一度データをクレンジングすることを繰り返しています。誰かがイベントに参加したら、その内容も共有します。ルール作りは難しいですが、最初の頃によくあった情報を隠すようなことはなくなり、透明性のあるMAの使い方ができていると思います。

――オペレーションの設計とシナリオの設計は必要なスキルが違うのかもしれませんね。

志知:関西のユーザー会に参加した時、「ソフトウェアの業界では繰り返し作業を疑う」という言葉を聞いてハッとしたことを覚えています。マーケティングの施策の中でも、準備作業は繰り返しが多く、効率化できるところがあると気づきました。効率化ができれば、考えることに時間を使うことができます。CoEで皆が集まるまではMarketo Engageの良さを活かせていなかったと思いました。今はインスタンスを見れば、どの事業部が何をやっているかがはっきりわかります。少しずつMarketo Engageをきれいに使えるようになったのではないでしょうか。

プロセスが効率化された結果、データを基に判断ができるように

――志知さんにぜひ聞いてみたいことがあります。MAの活用で部署内を優先するか、全体最適を優先するかで社内での衝突は起きなかったのでしょうか。

志知:ルールを杓子定規に当てはめることはしていないので、目立ったものはありません。「事業部に相談すること」か「皆で決める方がいいこと」は、臨機応変に判断しています。メンバーに恵まれているからかもしれません。ITに強い人、デザインが得意な人、間接部門との調整が得意な人が揃っているので、適材適所で役割分担ができていることも大きいと思います。

――実際にはどのぐらい仕事の効率化が進みましたか。国内のグループ全体がMAを活用することで得た具体的なインパクトを教えてください。

志知:施策の準備から実施、アフターフォローまでのプロセスがテンプレート化され、工数が削減できたと思います。それから皆でデータを見ているので、たとえば「この半年、Webサイトへのアクセスがないお客様へのアプローチはやめた方がいい。コミュニケーションが再開してからご案内をしよう」とデータを基に判断できるようにもなりました。

 私は「MA」や「デジタルマーケティング」という言葉が一人歩きしている状況を残念に思っています。よく「MAでやる」「MAで回す」という言葉を聞きますが、それには大きな違和感があります。MAやSFAはプロセスマネジメントの概念で、プロセスを管理してワークフローを自動化するもののはずです。メールを送れることやWebのアクセス履歴がわかることは手段であって、目的ではありません。これからマーケティングをやろうとしている事業部にはそのことを訴えていきたいです。

 メールだけでなく、使える機能はどんどん活用したらいいと思いますし、パイプラインを見ながら改善にMAを活用することが大事だと思います。

今後は営業活動全体の効率化を目指す

――堀場エステック様のMarketo Engage活用の当初の目的は、営業プロセスのマネジメントツールとしての活用でしたが、次の段階ではどんなことをやりたいと考えていますか。グループ全体としてチャレンジしたいことを聞かせてください。

志知:堀場エステックとして取り組んでいきたいのは、営業活動全体のサイクル化です。これまでは新規獲得を重視してきましたが、リードを供給すればするほど、既存のお客様も含めた営業の効率化の必要性を感じています。もちろん既存の大口アカウントには担当営業が付いているのですが、それ以外のお客様をどうフォローするかが決まっているようで決まっていないところがあると感じています。

 今いる人数でさらに売上を伸ばすためには、既存のお客様にもデジタルマーケティングとインサイドセールスを活用する仕組みにしたいと考えています。一人のお客様を面でフォローできる体制を営業の中に作り、「俺の客」という言葉がなくなるようにしたいです。というのも、Webサイトからでも営業からでも、どの接点からでもお客様に同じ価値を提供することが大事だと思うからです。

志知:これは見方を変えると、営業がお客様に提供している価値を、他の接点からでも同じように提供したいということでもあります。ですから、チームのメンバーには「私たちがやっていることはフロントの営業と同じであり、営業のサポートではない」と日頃から伝えるようにしています。そのことを営業全体で共通認識としてもってもらえるようにすることに取り組んでいきたいです。

 グループ全体への展開については、当初の計画とは変わり、MAとSFAの活用はリージョンの意思を尊重しようと変わっています。とはいえ、日本で体系化した取り組みを他のリージョンと共有することはできると思うので、他の地域のマーケティングとのコミュニケーションを続けるつもりです。まずは日本の中で、まだMAを使っていない事業部に展開することを優先していきます。

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/11/05 10:00 https://markezine.jp/article/detail/32110