SNSマーケティングの概念をスッキリ整理
今回紹介する書籍は、ホットリンク CMOの飯髙悠太氏による『僕らはSNSでモノを買う』。Webマーケティングメディア「ferret」の創刊編集長を経験し、複数のメディアのアドバイザーも務める同氏は、「SNSマーケティングは、今が一番おもしろい時代」と断言し、基本となる考え方やノウハウを披露しています。
本書は「SNS活用編」と「コンテンツ活用編」の二部構成。前半では、SNS特有の情報流通やUGCの重要性など、なんとなく理解しているものの、言葉にするのが難しかった様々なトピックについて、丁寧に解説しています。
たとえば企業アカウントの運用では、しばしば「フォロワーを増やすだけでなく、フォロワーの質やUCGを重視すべき」と言われます。その理由として本書が挙げたポイントは、SNSでは企業だけが発信者となるわけではなく、ユーザー全員がコンテンツの作り手になるという考え方。企業がユーザーに直接届けずとも、ファンであるフォロワーがリツイートやUGCによって情報を発信してくれることで、広範囲への拡散が期待できるというわけです。
他にも「SNS時代の購買プロセスはULSSAS(ウルサス)である」という、著者が考案した概念が紹介されています。ULSSASとは、「UGC(ユーザー投稿コンテンツ)→Like→Search1(SNS検索)→Search2(Google/Yahoo!検索)→Action(購買)→Spread(拡散)」という過程の頭文字をとったもの。本書の第1部・9章では、このプロセスを詳しく検討した上で、UGCを生む仕掛けを解説しています。
「#ウルサス本」で検索し、UGCを分析するのもお勧め
本書の後半「コンテンツ活用編」において言及されているのは、SNSマーケティングとコンテンツマーケティングの相乗効果について。著者は、UGCを促すきっかけになるのは、企業発の記事や投稿であると主張し、着火剤としてのコンテンツ制作を勧めています。
また、SNS、オウンドメディア、そしてリスティング広告といった様々な手法については、個別の施策で成果を判断するのではなく、全体最適の考え方で取り組むべきだとアドバイスしています。
SNSマーケティングに取り組み始めたばかりの担当者は、全体像を効率よく把握するための足掛かりとして、長く担当してきたマーケターは、これまでの実践を整理し、他部門・他社のマーケターと議論を進めるための土台として、本書を活用できるでしょう。
さらに、本書のおもしろさは、本から知識を得ることに留まりません。「#僕らはSNSでモノを買う」「#ウルサス本」で検索してみると、本の感想ツイートや、関連するイベントのレポートなど、多くのUGCが見つかります。様々な意見に触れながら学びを深めることができるほか、なぜ本書はこんなにも多くのUCGを生むことができたのかを、本から得た知識と絡めながら考察してみると、多くのヒントを手に入れることができるはずです。