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江端浩人氏に学ぶ、マーケティングとテクノロジー改革の最前線

88歳、米寿を迎えた近代マーケティングの父フィリップ・コトラーが伝えたいこと

新しいビジネスモデル“Profit Sharing for the Stakeholders”

 次に、コトラー博士は「Profit Maximization for the Shareholders(株主利益の最大化)」を重視する従来のビジネスモデルを脱却し、これからは「Profit Sharing for the Stakeholders(ステークホルダーとの価値共有)」を重視する、新しいビジネスモデルに転換すべきであると主張した。

 博士が提唱したこの新しいビジネスモデルは、非常に重要なことであると思うのでここで分析をしてみたい。

 旧来のビジネスモデルでは、株主利益を最大化させること(=Profit Maximization for the Shareholders)が重要視されてきた。しかし近年、特にミレニアル世代と呼ばれる1981〜1996頃に生まれた若い世代は、収益だけを追求した企業に対して魅力を感じることはなく、そのような企業の製品は購入しない、あるいはそのような企業には就職しないという動きも出てきている。

 そこで、新しいモデルが必要となる。「Profit sharing for the Stakeholders(ステークホルダーとの価値共有)」である。企業が生み出す価値や便益を、消費者、社会、地球環境など、すべてのステークホルダーで共有するということである。自社の収益だけを追求する企業は消費者に支持されず衰退してゆく一方で、自分が大事にする価値をきちんとコミュニケーションできる企業は支持され、地球環境とともに持続的に繁栄できるということである

 従来のビジネスモデルとの違いをまとめると、下図のようになる。

 成果の基準に関しては両方とも「Profit」となっているが、博士の唱えるProfitは単なる「収益」ではなく、「人間の幸福度(People betterment)」や「地球環境の健全さ(Planet Betterment)」も含まれる

 単独インタビューの中でも、博士は“Value”という言葉をしばしば使っており、ここは解釈を大きくするためまたWMS2019のテーマ“Value Creation Through Innovation”とも合致するので敢えて“Value”とすることにする。この解釈に関しては機会があれば議論してみたいと考える。

5年後まで同じことをしているビジネスはなくなる

 講演で語られたメッセージのなかで、特に日本企業に響いたのは「5年後まで同じことをしているビジネスはなくなる」という言葉ではないだろうか。なぜ5年後に同じビジネスをしているとなくなってしまうのか? 答えは簡単で、世の中が変わってきているからである。変化が必要な要因として、博士は特にデジタル、ソーシャルメディア、AI を挙げている。

 これからは消費者が主導権を持ち、流通が変化し、技術が進化し、マーケットの地理的制限がなくなる。そしてFAAG(GAFA)のような強大なプラットフォーム企業の出現により、競争環境も大きく変化していくだろう。

「Brand Activism」の登場

 こうした環境の中で、マーケティングはどのように変化していくべきだろうか。その1つの答えとして博士が提唱するのが、ブランドがスタンスを取る「Brand Activism」である。次回は、博士のインタビューも踏まえてこの「Brand Activism」に焦点を当てて解説を行うので、ご期待いただきたい。

筆者は、コトラー博士の活動を通じて新しいマーケティング4.0の意味を追求するグループ「Marketing 4.0 次世代マーケティングプラットフォーム研究会」をFacebook上で運営している。参加メンバーは現在約7,000人。興味のある方はそちらもご覧いただけるとより深い内容が理解できると考えます。

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この記事の著者

江端 浩人(エバタ ヒロト)

iU大学教授、江端浩人事務所 代表、MAIDX LLC代表、AlMONDO事業顧問

米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、日本コカ・コーラでマーケティングバイスプレジデント、日本マイクロソフト業務...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/10/18 07:00 https://markezine.jp/article/detail/32210

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